極東4th

 目が覚めたら、自分のベッドの上だった。

 パジャマを着ているのは、きっと真理が使用人の誰かに命じたにちがいない。

 彼自身が、そんな甲斐甲斐しい真似は、絶対にしないだろうから。

 乙女らしい、自分の裸の行方よりも。

 鎧ねぇ。

 さっき帰ってきた世界のことを、早紀は噛み締めてみた。

 まだ、よく分かっていない。

 ベッドの上に座ったまま、早紀は両手を広げてみたが、生身となんら変わりがない。

「おはよう、お母さん…私、鎧になったんだって」

 枕元の、母の写真に語り掛けてみる。

 早紀が魔女だというのなら、母だって多分そうだったのだろう。

 しかし、とても魔女には見えない笑顔に、肩をすくめながらベッドを降りる。

 事件は。

 洗面所で起きた。

 早紀は、いつものように顔を洗おうと思っていたのだ。

 こんがらがったままの頭で考え事をしながら、半ば意識せずにいつもの作業を行った。

 タオルで顔を拭き、洗面所から立ち去りかけた時。

「ん?」

 早紀は、違和感に足を止めた。

 何か。

 何か、今、見えたのだ。

 おそるおそる、早紀は洗面所を振り返った。

 正確に言うと、鏡を見たのだ。

 見間違い、ではなかった。

 前髪を、がばっと持ち上げてみる。

 鏡の中の早紀の――額。

 そこには。

 赤紫の、丸に似た記号が描かれていたのだ。

「ええーっ!?」

 何回洗っても、取れなかった。