怒っている。
それは、すぐに分かった。
怒って、早紀の部屋にやってきた。
理由は分からない。
いや、ありすぎる、のほうが正しいか。
彼女は、真理にとってあまりに問題を抱えた魔女だ。
だから怒っても当たりま──あっ。
ツカツカ淀みない足取りで近づいてくる姿に、反応できずにいた早紀は。
目の前に立った彼が、手を伸ばすのをどこか遠い意識で見ていた。
気づいたら。
鎧になっていた。
なん、で。
蝕ではない。
しかも、まだ昼間。
なのに彼は、早紀を鎧に変え、なおも手を伸ばすのだ。
彼女を身に纏うために。
満たされる。
これまで、何度も真理はそうして早紀を満たした。
昨日でさえも。
その痛いほど切ない充足感が、自分に広がってゆく。
こんな空々しい幸せなど、いらないというのに。
早紀の部屋のバルコニーから、そして飛び立つのだ。
どこへ。
身を任せたまま、早紀は空を見た。
憂鬱そのものの曇天。
その雲そのものに、彼は向かっているように思える。
まっすぐまっすぐ、真上に。
暗い水蒸気の群れに突っ込み──そして、抜けた。
雲海を足もとに見下ろす、明るい太陽の世界。
魔族には、不似合いな美しさだ。
そんな世界の真ん中で、真理は動きを止めた。
何を言うでもない。
何をするでもない。
おそらく、目的もない雲の上。
そんな無駄な飛翔。
真理にしては、ありえないほどの無駄だ。
ああ。
ぼんやりと、早紀は思った。
真理もまた、彼女の存在を持てあましているのだと。
持てあまして、どうしようもなくなることがあるのだ、と。
そう思ったら。
ちょっとだけ、彼をいとおしく思えた。
それは、すぐに分かった。
怒って、早紀の部屋にやってきた。
理由は分からない。
いや、ありすぎる、のほうが正しいか。
彼女は、真理にとってあまりに問題を抱えた魔女だ。
だから怒っても当たりま──あっ。
ツカツカ淀みない足取りで近づいてくる姿に、反応できずにいた早紀は。
目の前に立った彼が、手を伸ばすのをどこか遠い意識で見ていた。
気づいたら。
鎧になっていた。
なん、で。
蝕ではない。
しかも、まだ昼間。
なのに彼は、早紀を鎧に変え、なおも手を伸ばすのだ。
彼女を身に纏うために。
満たされる。
これまで、何度も真理はそうして早紀を満たした。
昨日でさえも。
その痛いほど切ない充足感が、自分に広がってゆく。
こんな空々しい幸せなど、いらないというのに。
早紀の部屋のバルコニーから、そして飛び立つのだ。
どこへ。
身を任せたまま、早紀は空を見た。
憂鬱そのものの曇天。
その雲そのものに、彼は向かっているように思える。
まっすぐまっすぐ、真上に。
暗い水蒸気の群れに突っ込み──そして、抜けた。
雲海を足もとに見下ろす、明るい太陽の世界。
魔族には、不似合いな美しさだ。
そんな世界の真ん中で、真理は動きを止めた。
何を言うでもない。
何をするでもない。
おそらく、目的もない雲の上。
そんな無駄な飛翔。
真理にしては、ありえないほどの無駄だ。
ああ。
ぼんやりと、早紀は思った。
真理もまた、彼女の存在を持てあましているのだと。
持てあまして、どうしようもなくなることがあるのだ、と。
そう思ったら。
ちょっとだけ、彼をいとおしく思えた。


