極東4th

---
 バチンッ。

 いきなり無理に電気がつけられたように、早紀は目を開けた。

 目の前には、鎧の男。

「夢の中で、長く寝ると帰って来られなくなるからな」

 あっさりとした言葉に、彼女の方が戸惑っていた。

 さっきのは。

 自分が知らないはずの、母たちの世界。

 それが、早紀の中にあったのだ。

 鎧の男は、彼女の中からその記憶を引きずり出したのである。

 ああ。

 ああ、本当に。

 自分は、貴沙だったのか──じわじわと、足元からその現実が這い上がってくる。

 どこか、現実的ではない事実だった。

 本当は間違いですよ、と言われたら、喜んで納得しただろう。

 あの、派手で高慢で美しい魔女。

 イデルグに惚れられ、育ての母に愛された女。

 それが、それがこの早紀だと。

 地味で、姿を隠す能力しかない──早紀は、自分の思考に硬直した。

「なるほど…」

 心が通じてしまったらしい鎧が、小さく笑った。

「そうか…『暴き』の反対なら『秘める』、か」

 逃げ場が、ない。

 どこにも、ない。

 夢の中さえも、早紀は現実にぐるぐる巻きだ。

 そして、その現実で貴沙を待っている人がいる。

 育ての母──いや、葵だ。

 愛した友の帰りを、病床で待ち続けている。

 早紀を待ってなんかいなかった。

 誰も自分を。

 待ってなんか。

「ああもう…いいから目を覚ませ」

 彼女の渦巻く思考を鬱陶しそうに、鎧の男が言い放つ。

 ついでに。

 夢から蹴り落とされた。