極東4th

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「ひでぇ顔だな」

 とぼとぼと歩いていた早紀に、声がかけられる。

 ああ。

 いつの間にか眠りの道を、歩いていたようだ。

 彼女の前には、鎧の男が立っていた。

 早紀の力について、一番詳しいはずの男。

「どこまで…知ってたの?」

 ぼんやりと、言葉を発していた。

 少しずつ、現実で起きたことが、早紀の頭の中で構築されていく。

「まあ…大体は、な」

 悪びれる様子はない。

 元々、彼は言ったではないか。

 どんな力でも構わないと。

 ただ、彼は思うまま戦うことができればいいのだ。

「そう…」

 ぺたんと、その場に早紀は座り込んだ。

 昼間。

 彼女の魂が、引き裂かれるような爆弾が降ってきた。

 私は父親は誰なのか──ではなく、私は誰なのか。

 私は早紀で、でも本当は貴沙で。

 ああ。

 そこまで考えたら、目の前が一瞬だけ暗くなった。

 ああ、そうだったのかと。

 貴沙の子どもだから、早紀とつけられたわけではなかったのだ。

 キサが裏返ったから、サキと。

 名前を、裏返しただけ。

「本当のことを…知りたいか?」

 頭の上で、鎧の男の声がする。

 のろのろと、彼を見上げる。

「だって…知らないでしょ?」

 知るはずがない。

 裏返ったのは、むかしむかしの話。

「…ここは俺の世界だぜ。そんでもって、目の前にお前さんの魂がある」

 金属の手が、大きく広げられるように、見上げる早紀の顔に近づいてくる。

 あ。

 今度こそ、本当に目の前が真っ暗になってしまった。