極東4th

「零子が、いきなり君の憑き魔女が『分かる』と言い出してね」

 遠かったから、やむを得ずこの姿を借りたんだよ。

 トゥーイは、せわしなくひとつ目を鎧の上で動かした。

「まあ、こんな空中で立ち話もなんだし…うちに来ないかい? おっと…お願いじゃなくて、強制だよ。こんなところで鎧姿で何をしていたか、告げ口されたくないだろう?」

 立て板に水の勢いで、しかし真理の逃げ道をふさぐ言葉を吐く。

 面倒な奴が。

 真理は、内心で舌打ちした。

 まだ、誰も殺してはいない。

 だから、いくらでも現状をしらばっくれることは出来る。

 しかし、1stの双子の息子に恥をかかせ、2ndには既に不審の眼で見られている今、何を告げ口されても面倒なことになるのは間違いなかった。

「このまま移動しよう…後で何か言われたら、演習中とでも答えておくさ」

 そして──行きたくもない、3rdの屋敷に行く羽目となったのだ。

 バルコニーに降りるなり、トゥーイは鎧を解いた。

 零子も全て理解しているようで、人に戻るなりすぐさまバルコニーの戸を開けに動く。

「君も…解きなよ」

 遅れて着地しながらも、真理は鎧を脱げずにいた。

 まだ平静に戻れないでいるであろう早紀を、彼らの元にさらすことになる。

 ふぅ。

 覚悟を決めて、真理は鎧を脱いだ。

 抜け殻となった鎧と向かい合う。

 額を、なぞった。

 瞬間。

 泣き濡れた早紀の顔が現れ、そのまま前のめりに倒れこむ。

 その身体を、真理は抱きとめた。

「どうしたんだい?」

 彼の胸に顔をうずめたままの早紀に、怪訝な声が飛ぶ。

「…気にするな」

 力の入っていない身体を、横抱きにするようにして、真理は室内へと入った。

「そんな…仲だったかな?」

「どうとでも…」

 トゥーイの怪訝など、いまの彼には何の意味もない。

 ただ。

 早紀と、早紀の秘密を知る存在をどうすべきか──それだけが、最重要項目だったのだ。