極東4th

---
『彼女は、本当は貴沙という魔女だ。我らが宝の珠の力で、今の姿に生まれ変わってしまっただけ』

 門の向こうの海族は、そう言った。

 早紀は、本当は違う生き物なのだと。

『この人間の女性が、生き証人だ。彼女の目の前で、貴沙という魔女は珠を飲んだ』

 腕の中には、早紀の育ての母。

『殺さずに、珠を取り出す方法が分かった…それがお互いのためになると思わないか?』

 思わないな。

 真理は、自分にしがみついて泣きじやくる早紀を抱いたまま、病室の三人を見下ろした。

 弱すぎる人間。

 力の謎を追い過ぎた魔女。

 目障りな海族。

 この三人は、早紀の一番深い秘密を知っている。

 片手で早紀の身体を支えながら、もう片方の手で彼女の額をなぞった。

 この三人は――殺さなければならない。

 真昼の、変化。

 腕の中の早紀が、魔気に包まれる。

 その腕から飲み込むように、真理は彼女の中に取り込まれた。

 瞬間、鎧ごしに彼が見たものは。

 ベッドの上の人間を抱えて、走り去る海族と。

 駆け込んできた別の魔族。

 タミに似た顔の、制服の男。

 魔力は、魔族には効かない。

 だが。

 圧倒的な鎧の力は、別だ。

 刀は、特に。

 魔力で増幅しているとは言え、物理の力もある。

 たとえ二人になろうとも、抗えはしない。

「そこまで…だよ」

 抜きかけた刀を、真理は止めさせられた。

 後ろ、だ。

 空中の真理の、更に後ろ。

 聞き覚えのある声に、彼は振り返らざるを得なかった。

「同族殺しは、証拠が残らないようにやらないと…後が面倒だろ?」

 ひとつ目の鎧。

 トゥーイだった。