極東4th

 真理と――遠くなった。

 元々あった距離よりも、もっと遠く。

 同じ車の中にいてなお、まったく無関係な生きもののように。

 真理は、彼女を遠巻きに見るだけ。

 早紀は、できうる限り、彼に接触しないようにした。

 昼休み。

 遠い真理のことと、育ての母のことを考えないようにしている早紀の元に――タミが来た。

 扉のところで、ただつっ立っている彼女に驚く。

 また、真理がイデルグの息子相手に、立ち回りでもしているのかと思いきや。

 手を握り、顔を近付けてくる。

「人間に会いに行くわ…」

 かすれるほどの、小さな小さな内緒話。

 え?

 タミを見つめるが、相手はそれ以上補足する気はないようだ。

 人間。

 早紀を誘ってまで会う相手など、一人しか思いつかない。

 タミの視線が、斜め後ろにちらと投げられる。

 そこにいたのは――真理、ではない。

 濃厚な目元とまつげに、一瞬性別を間違いそうになるが、男物の制服の見知らぬ魔族がいたのだ。

 見知らぬ、だが、同時に雰囲気はタミにそっくりだった。

 兄、あるいは近い親族か。

 彼が、人間の元へ連れて行ってくれるというのか。

「ただし…」

 視線を早紀に戻した彼女が、言葉を付け足した。

 空気が、小さくわななく。

 タミの唇が、震わせたのだ。

「ただし…カシュメルには…秘密です」