極東4th

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「ほらな…」

 夢で、彼は両手を広げて見せた。

 今日の出来事を、なんと簡潔に態度で現すのか。

 真理がキレたという裏づけが、見事に取れましたよ──そう言いたいのだ。

 しかし、声音はそれを歓迎していない。

 早紀だって、歓迎するはずがなかった。

「馬鹿みたい」

 早紀は、信じられなかった。

 あの真理が、自分から二人にケンカを売ったというのだ。

 タミが、そう教えてくれた。

 それくらい、怒り心頭だったということか。

 だが、馬鹿げている。

 憑き魔女以外の部分の早紀など、どうなろうと知ったことではないくせに。

「困るのは、お前に対して馬鹿になることだぜ」

 鎧の男は、唸るような声を出す。

 最近、彼も機嫌が悪い。

「うん、困る…ほっといて欲しい」

 下手に関わられると、早紀の中の弱い女の部分が、抉り出されてしまう。

 今日、自分で抉り出したばかりのそれ。

 一生懸命、早紀はそれを踏みつけようとしている。

 そして、消してしまおうとしているのだ。

「いや…そうじゃない」

 鎧が、言葉を濁す。

 顎を彼女の方に向ける。

「お前という存在を、奴と俺は共有してるんだ…」

 半分ずつの契約の話が、こんなところでちらつく。

 それと、馬鹿にどんなつながりが。

「奴がまずい馬鹿になると…俺も馬鹿にならなきゃならなくなる」

 腕が。

 鎧が、早紀の腕を取る。

 自分の方に引き寄せるように、強い力が加えられた。

 間近に立つ、硬い身体。

 手は離され、その指が早紀の額をこづいた。

 いたっ。

 まだ残る、噛まれた痛み。

 そういえば。

 二人に──噛まれた。