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早紀がいた。
更に後方にタミがいたので、誰がこの女を屋上に連れてきたのかは、一目瞭然である。
余計なことを。
その上、早紀は彼を呼び捨てにした。
初めてのことだ。
名前を呼び捨てに、というよりも、彼の名そのものを口にしたのも、おそらくこれが初めて。
ふらふらしていたはずの目が、しっかりと真理を映している。
どうしてこう。
真理は、目を細めた。
どうしてこう、簡単に変わってゆくのか。
また、昨日と違う女になった。
何が彼女に、あんな目で名を呼ばせたのか。
彼の思考は、動いた空気で邪魔される。
甲斐だ。
吹雪を止めたことで、彼は雪のマフラーから逃れていた。
顔が傷だらけで血を流しているのは、自分の爪のせい。
ここまできたのだ。
邪魔が入ったからといって、この男も戦いをやめるはずなどない。
だが。
「もういいから! イデルグさんちに、私はいかないから!」
早紀が、大きな声をあげる。
あの、誰よりも空気でありたがった女が。
さすがの甲斐も、その声の方を見る。
イデルグさんち。
早紀らしい表現だ。
その表現で、はっきりと息子たちに拒否の意を伝えようとしているのか。
いや。
早紀の目は、真理の方に向いていた。
甲斐を拒否しているのではなく、真理にその旨を宣言しているようにも聞こえる。
だから、こんなことはやめろと。
さて。
早紀の拒否を背に、真理は甲斐を向き直った。
殺意は、ゆるやかに下降し始めている。
だから、ここでやめてやってもいい。
そんな目で、甲斐を見てやった。
「………!」
彼の拳は、真理に向かって構わず繰り出されたのだ。
ああ…そうだろうな。
早紀がいた。
更に後方にタミがいたので、誰がこの女を屋上に連れてきたのかは、一目瞭然である。
余計なことを。
その上、早紀は彼を呼び捨てにした。
初めてのことだ。
名前を呼び捨てに、というよりも、彼の名そのものを口にしたのも、おそらくこれが初めて。
ふらふらしていたはずの目が、しっかりと真理を映している。
どうしてこう。
真理は、目を細めた。
どうしてこう、簡単に変わってゆくのか。
また、昨日と違う女になった。
何が彼女に、あんな目で名を呼ばせたのか。
彼の思考は、動いた空気で邪魔される。
甲斐だ。
吹雪を止めたことで、彼は雪のマフラーから逃れていた。
顔が傷だらけで血を流しているのは、自分の爪のせい。
ここまできたのだ。
邪魔が入ったからといって、この男も戦いをやめるはずなどない。
だが。
「もういいから! イデルグさんちに、私はいかないから!」
早紀が、大きな声をあげる。
あの、誰よりも空気でありたがった女が。
さすがの甲斐も、その声の方を見る。
イデルグさんち。
早紀らしい表現だ。
その表現で、はっきりと息子たちに拒否の意を伝えようとしているのか。
いや。
早紀の目は、真理の方に向いていた。
甲斐を拒否しているのではなく、真理にその旨を宣言しているようにも聞こえる。
だから、こんなことはやめろと。
さて。
早紀の拒否を背に、真理は甲斐を向き直った。
殺意は、ゆるやかに下降し始めている。
だから、ここでやめてやってもいい。
そんな目で、甲斐を見てやった。
「………!」
彼の拳は、真理に向かって構わず繰り出されたのだ。
ああ…そうだろうな。


