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甲斐という男は、自分の力を強化する能力を持っていた。
イデルグの息子に、ある意味とても相応しい力だった。
筋肉の鎧でふくれあがる姿を、真理は顎を上げて見下したまま。
既に、美濃は沈んだ。
右腕に張り付いた氷は、生きた氷だ。
少しずつ、少しずつそれは美濃の身体への侵食を始め、彼は自分の力を発揮するまでもなく、氷に食われるように倒れた。
だが、相手は魔族。
せいぜい、半分ほどで侵食は止まったことだろう。
動きを封じられているだけで、死んではいないはずだ。
勿論、この後物理的にトドメを刺せば、それは叶う。
「感謝したらどうだ?」
目の前の、力の塊に言ってやる。
「いまなら…お前が当主になれるぞ」
嘲笑と共に。
刹那──目の前で怒りが弾けた。
それと共に、真理の上半身ごと砕くべく、巨大な拳が振り出される。
なお、嘲りが浮かぶ。
美濃は、甲斐を助けようとし氷に呑まれた。
その美濃が倒れたことに、甲斐が怒りを発する。
決着がつかないはずだ。
普通の双子ならもう、どちらかの命などとっくになくなっている。
いまだ、二人がのうのうと生きながらえているのは、くだらない感情に甘えていたからだ。
そう理解すると、真理はおかしくてたまらなくなる。
吹雪のマフラーを、その太い甲斐の首に巻きつけ、締め上げてやりたくなる。
そして──してやった。
ものともせずに、真理に拳が迫る。
猪のごとき突進力だ。
マフラーを、目にもかけてやった。
真理は、雪に音を吸い取らせながら、すいと身をかわす。
恐竜のごとき咆哮があがるのがうるさく、口にも巻いてやる。
両手で自分の顔をかきむしるように、甲斐はマフラーを払おうとした。
だが、その爪は。
自分の顔に、強い傷跡を残すだけ。
払っても払っても、吹雪はすぐそこにいくらでもあるのだ。
もがき暴れる男を沈めようと、真理が瞼を動かしかけた時。
「真理!」
名が。
呼ばれた。
吹雪を。
止めてしまった。
甲斐という男は、自分の力を強化する能力を持っていた。
イデルグの息子に、ある意味とても相応しい力だった。
筋肉の鎧でふくれあがる姿を、真理は顎を上げて見下したまま。
既に、美濃は沈んだ。
右腕に張り付いた氷は、生きた氷だ。
少しずつ、少しずつそれは美濃の身体への侵食を始め、彼は自分の力を発揮するまでもなく、氷に食われるように倒れた。
だが、相手は魔族。
せいぜい、半分ほどで侵食は止まったことだろう。
動きを封じられているだけで、死んではいないはずだ。
勿論、この後物理的にトドメを刺せば、それは叶う。
「感謝したらどうだ?」
目の前の、力の塊に言ってやる。
「いまなら…お前が当主になれるぞ」
嘲笑と共に。
刹那──目の前で怒りが弾けた。
それと共に、真理の上半身ごと砕くべく、巨大な拳が振り出される。
なお、嘲りが浮かぶ。
美濃は、甲斐を助けようとし氷に呑まれた。
その美濃が倒れたことに、甲斐が怒りを発する。
決着がつかないはずだ。
普通の双子ならもう、どちらかの命などとっくになくなっている。
いまだ、二人がのうのうと生きながらえているのは、くだらない感情に甘えていたからだ。
そう理解すると、真理はおかしくてたまらなくなる。
吹雪のマフラーを、その太い甲斐の首に巻きつけ、締め上げてやりたくなる。
そして──してやった。
ものともせずに、真理に拳が迫る。
猪のごとき突進力だ。
マフラーを、目にもかけてやった。
真理は、雪に音を吸い取らせながら、すいと身をかわす。
恐竜のごとき咆哮があがるのがうるさく、口にも巻いてやる。
両手で自分の顔をかきむしるように、甲斐はマフラーを払おうとした。
だが、その爪は。
自分の顔に、強い傷跡を残すだけ。
払っても払っても、吹雪はすぐそこにいくらでもあるのだ。
もがき暴れる男を沈めようと、真理が瞼を動かしかけた時。
「真理!」
名が。
呼ばれた。
吹雪を。
止めてしまった。


