極東4th

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 真理は。

 1年のハイクラスに来ていた。

 最初に自分を見つけたのは、タミ。

 一瞬だけ、怪訝を瞳に覗かせるが、近づいてもこなかった。

 ただ。

 彼女はその瞳を、室内へと向けるのだ。

 窓際付近に立っている、大きな身体。

 最初に目に留まったのは、甲斐の方だった。

 丁度いい。

 ツカツカと、その無駄なサイズの身体に歩み寄る。

 甲斐の視線が、すぐに真理を映す。

「返事だ」

 真理は──握り締めていた指を、開いた。

 指の隙間から、小さな破片がゴミのように床に向けて落ちてゆく。

 赤と黒のゴミ。

 一度視線を下に向けた甲斐は、そのままゆっくりと彼に向けて上げる。

「これは、卿の返事ですよね」

 早紀のではないと、そう言いたいのだろう。

 それが。

「それが…どうかしたか?」

 顎を軽く上げ、自分の視線が低いのも構わず、真理は見下す目をした。

 たとえイデルグの息子であろうが、甲斐自身は明らかに彼よりも格下の身分だ。

 真理には。

 憎悪があった。

 それを──隠さなかった。

 冴え冴えとした憎悪を、隠すことなく甲斐にたたきつけたのだ。

 パキッと、音がした。

 甲斐の前髪に、氷の粒が絡みつきそこねて落ちた音だった。

 瞬間。

 目の前の甲斐の身体が、横に吹っ飛んだ。

 吹っ飛ばしたのは、美濃の右腕。

 その右腕は──見事に凍り付いていた。

「乱暴ですね…」

 美濃が、腕を忌々しく見つめる。

 すぐには砕けないのだ。

 当たり前だ。

「それが…どうかしたか?」

 簡単に砕ける氷になど、するはずがなかった。