そして翌朝。
またも、登校の後部座席は、不自然な沈黙に包まれることになる。
早紀の沈黙は、昨日のものとは違う。
簡単に言えば──落ち込んでいた。
昨夜、夢の中で鎧に言われたことが、起きてからもずっと彼女を刺し貫いていたのだ。
だから、真理が現在どれだけ不快な状況であるかとか、どれだけキレているかとか、あまり意識を向けていない。
自分のことで、手いっぱいだった。
そして。
出がけに、入り口にあった花が全部氷漬けになって粉々に砕けていたことも、確認はしたが衝撃に思うことはなかった。
「……」
中央のタミが、右と左に一度ずつ大きく目を動かしたが、今朝は口は動かさないでいてくれるようだ。
何で。
何で、真理の好意を自分は欲しがったのか。
他の誰よりも、そんなものを望めないはずの相手なのに。
それが、分からないのだ。
タミに、そんなものを求めていない。
修平にも、勿論、イデルグの双子にも。
なのに──真理には、求めてしまった。
ちらりと。
真理を見た。
むっつりと、不機嫌を残した──それでも、綺麗すぎる横顔。
子供の頃、早紀が来た時に出ていけと言った時も、こんな顔だったのかもしれない。
ああ、そうか。
少しだけ、心当たりを見つける。
その出会いが、キーワードだ。
真理は、最初から彼女を煙たがっていた。
他の人が、空気レベルには彼女をそこに置いておいてくれたのに、彼だけが早紀を拒絶していた。
そう。
空気ではなく、唯一拒絶してくれた人なのだ。
逆に言えば。
早紀の『存在』を、たった一人強く認識してくれていた相手だった。
『出ていけ』、『まだいたのか』と面と向かって言われる度に、彼女は何とか図太く切り抜けてきた。
だが、あの瞬間だけ、早紀という魔女は生きていた。
この世にあって、唯一誰かから特別な感情を抱かれていた。
それが──真理だったのだ。
またも、登校の後部座席は、不自然な沈黙に包まれることになる。
早紀の沈黙は、昨日のものとは違う。
簡単に言えば──落ち込んでいた。
昨夜、夢の中で鎧に言われたことが、起きてからもずっと彼女を刺し貫いていたのだ。
だから、真理が現在どれだけ不快な状況であるかとか、どれだけキレているかとか、あまり意識を向けていない。
自分のことで、手いっぱいだった。
そして。
出がけに、入り口にあった花が全部氷漬けになって粉々に砕けていたことも、確認はしたが衝撃に思うことはなかった。
「……」
中央のタミが、右と左に一度ずつ大きく目を動かしたが、今朝は口は動かさないでいてくれるようだ。
何で。
何で、真理の好意を自分は欲しがったのか。
他の誰よりも、そんなものを望めないはずの相手なのに。
それが、分からないのだ。
タミに、そんなものを求めていない。
修平にも、勿論、イデルグの双子にも。
なのに──真理には、求めてしまった。
ちらりと。
真理を見た。
むっつりと、不機嫌を残した──それでも、綺麗すぎる横顔。
子供の頃、早紀が来た時に出ていけと言った時も、こんな顔だったのかもしれない。
ああ、そうか。
少しだけ、心当たりを見つける。
その出会いが、キーワードだ。
真理は、最初から彼女を煙たがっていた。
他の人が、空気レベルには彼女をそこに置いておいてくれたのに、彼だけが早紀を拒絶していた。
そう。
空気ではなく、唯一拒絶してくれた人なのだ。
逆に言えば。
早紀の『存在』を、たった一人強く認識してくれていた相手だった。
『出ていけ』、『まだいたのか』と面と向かって言われる度に、彼女は何とか図太く切り抜けてきた。
だが、あの瞬間だけ、早紀という魔女は生きていた。
この世にあって、唯一誰かから特別な感情を抱かれていた。
それが──真理だったのだ。


