極東4th

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 鬱陶しい。

 真理の中の不快と不機嫌は、その言葉へと名前を変貌させた。

 早紀にまとわりつく、イデルグの双子だ。

 簡単に振り払えない位置にいる二人だけに、苛立ちに似た感情が、彼の中に生れていた。

 それは、自宅の前に積まれた花を見た時、最高潮に達する。

 誰もいなければ、真理はこの花を一瞬にして冷凍し、粉々に砕いただろう。

 しかし。

 この花は、早紀に宛てられたもので、彼の一存でどうこうできるものではなかった。

 いや。

 出来ないわけではない。

 だが、それをやることで、更に早紀との間に溝を穿ち、イデルグが入りやすくなると思うと、尚更苛立ちを覚えるのだ。

 それもこれも、彼女が自分に対し、従順ではないからである。

 真理は、早紀に対し従属を求めているのに、彼女は自分に対し対等を求めている。

 最初から、噛みあうはずなどなかった。

 花を無視して自室に入ったはいいが、真理のみぞおちにたまった苛立ちは、落ち着く様子はない。

 早紀がまだ、あの花の山の前で足を止めているのかと思うと、更にひどくなっていく。

 そんな早紀に、何か言う言葉が出来たわけでもないというのに。

 みぞおちの苛立ちに憑き動かされ──真理は、部屋を出た。

 そうしたら。

 早紀が、既に廊下にいた。

 一瞬、真理は安堵した自分に気づいた。

 彼女は、さっさと花のそばを離れていたのだ。

 だが、その直後。

 安堵の感覚は、急転直下に突き落とされる。

 彼女の手の中に。

 あの花が一輪、握られていたのだ。

 苛立ちが、大きく膨れ上がる。

 真理が、これまで見たこともない生き物に進化していく。

 その花を手にしたことによって、早紀がイデルグの好意を受け入れたように感じたのだ。

 生き物の名前は、一番近しいものに例えるなら──殺意。

 イデルグの双子を、存在そのものから消し去りたいと思う感情。

 言うなれば。

 とても、魔族らしい感情だった。