極東4th

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 早紀は、帰りの車中、非常に気まずい気分を味わわされた。

 昼休みに、あんなやりとりを真理としてしまったのだ。

 噛み合うはずのない、『好意』という感情。

 要求され、つっぱねた。

 真理は黙ったままだが、早紀を無視したいつものだんまりとはワケが違う。

 そして、この空間には。

「……」

 タミもいた。

 同居がはじまってから、彼女も一緒に通学するようになっていたのだ。

 彼女は、ちょうど中央の席。

 両側の微妙な異変に、無言で視線だけを投げてよこすのである。

 制服姿だが、手袋はいつも通りだ。

 その手袋の手が、軽く早紀の腕に触れている。

 彼女の存在を、忘れないようにするための、タミなりの方法らしい。

 特に拒む理由もないので、戸惑いながらもそれを受け入れていた。

「そういえば…」

 その彼女が、微妙な空気を軽くつつくように声を発する。

 どちらに向けて言おうとしているのか、分からないが、早紀は自分にではないだろうと思っていた。

「イデルグ卿の子息に、いろいろ聞かれましたわ…」

 瞬間。

 車内の空気が、冷凍された。

 真理の、視線によって。

 なんで、タミがイデルグの話を。

 そう思いかけて、すぐに分かった。

 タミは、1年なのだ。

 そして──ハイクラス。

 あの双子と、クラスメートなのである。

 彼女が、カシュメル家にいるという情報を、どこからか仕入れたに違いない。

 タミの視線が、早紀の方に向く。

 真理ではなく。

「あなたの好きなものを、調べて欲しいと頼まれたのだけど…」

 冷えゆく空気の中、彼女は淡々と早紀に向けて言葉を続ける。

 いや、あの。

 タミの向こう側のブリザードに気圧されて、早紀の唇は、あわあわと空回る。

「そんな義理はないから、『脳筋に付き合う暇はなくてよ』、と答えておいたわ」

 よかったかしら?

 早紀は、斜め上方を見ながら、タミの言葉に軽く汗をかいた。

 ああ──どっちか分かった。