畏怖があるのは、想定していなかったわけではない。
真理は、憮然としつつもその事実を受け入れた。
しかし、当主としてカシュメルの血族の者に、尊敬されて然るべきだと、心のどこかで思っていたのだ。
だが。
相手は、あの早紀だったのだ。
憑き魔女になるまで、彼女は自分が魔女である事実を知らなかった。
だから、カシュメル家のことなど、これっぽっちも理解していなかったのだろう。
畏敬にせよ尊敬にせよ、生まれるはずがないのである。
そんな、鈍い娘に。
当主自ら、魔力を分け、タミの手配をし、育ての母の人間のことを調べ、近くまで連れて行き、海族に拉致されているところを助けに行ったのだ。
しかし、そのいずれも(魔力を分けたことはともかく)、早紀をありがたがらせることなどなかった。
この女は。
真理は、彼を『怖い』と一言で片づけた女を見た。
重苦しい髪をタミに切られたらしく、昨日のような化粧がなくとも、随分様変わりした気がする。
目もとは、まだおぼつかないが、それでも真理の反応を伺っていた。
怖い、ということに対して、彼がどう出るのか。
「怖いより…」
釈然としない結果を、真理は塗り替える必要を感じた。
感情は、変わる。
人によっては、それこそめまぐるしく。
「怖いより…好きになれ」
早紀が、魔女である自分を受け入れ始めたように、いま彼女の持つ『怖い』を変えることは出来るのだ。
それが、彼女を取り巻く不穏な環境から、彼女自身を守る力になる。
そんな真理の言葉に。
早紀は、一瞬固まって。
しかし。
直後。
深く沈んだ表情になった。
理解できない、感情の動きだ。
何故、そこで沈むのか。
唇が。
早紀の唇が、小さく動く。
「私のこと…好きじゃないくせに」
ぼそり。
真理は、憮然としつつもその事実を受け入れた。
しかし、当主としてカシュメルの血族の者に、尊敬されて然るべきだと、心のどこかで思っていたのだ。
だが。
相手は、あの早紀だったのだ。
憑き魔女になるまで、彼女は自分が魔女である事実を知らなかった。
だから、カシュメル家のことなど、これっぽっちも理解していなかったのだろう。
畏敬にせよ尊敬にせよ、生まれるはずがないのである。
そんな、鈍い娘に。
当主自ら、魔力を分け、タミの手配をし、育ての母の人間のことを調べ、近くまで連れて行き、海族に拉致されているところを助けに行ったのだ。
しかし、そのいずれも(魔力を分けたことはともかく)、早紀をありがたがらせることなどなかった。
この女は。
真理は、彼を『怖い』と一言で片づけた女を見た。
重苦しい髪をタミに切られたらしく、昨日のような化粧がなくとも、随分様変わりした気がする。
目もとは、まだおぼつかないが、それでも真理の反応を伺っていた。
怖い、ということに対して、彼がどう出るのか。
「怖いより…」
釈然としない結果を、真理は塗り替える必要を感じた。
感情は、変わる。
人によっては、それこそめまぐるしく。
「怖いより…好きになれ」
早紀が、魔女である自分を受け入れ始めたように、いま彼女の持つ『怖い』を変えることは出来るのだ。
それが、彼女を取り巻く不穏な環境から、彼女自身を守る力になる。
そんな真理の言葉に。
早紀は、一瞬固まって。
しかし。
直後。
深く沈んだ表情になった。
理解できない、感情の動きだ。
何故、そこで沈むのか。
唇が。
早紀の唇が、小さく動く。
「私のこと…好きじゃないくせに」
ぼそり。


