極東4th

---
「お前は…俺が嫌いか?」

 いたって、真面目な質問だった。

 真理は、自分に対するいい感情を、早紀から引き出さなければならないと悟ったからだ。

 嫌いの反対は、好意的な感情だ。

 その中には、単純な好きから、憧れや尊敬というものも含まれる。

 もし、早紀がそのような感情を自分に持っていると自覚すれば、おのずと行動も変わってくる。

 その感情が、他より強ければ、真理を裏切ることもなくなる。

 母とやらも、海族とやらも、ほかの魔族の邪魔者も、入ることが出来なくなるのだ。

 これまで、早紀が自分に対してどう思っていようが、どうでもよかった。

 憑き魔女としての仕事さえきっちり果たせば、あとは本当に何でもよかったのだ。

 だから。

 そのように扱ってきた。

 しかし、彼女はただの『物』ではなかった。

 まったく思い通りにはならない。

 そして、このまま思い通りにならなければ、真理にとって残念な事態になる可能性があるのだ。

 それを阻むためには。

 真理を好きにさせるのが、一番早いことに思えたのだ。

 早紀は。

 長いこと硬直していた。

 真理の質問は、思いのほか彼女に衝撃を与えたようだ。

「え…っと…あ…」

 その顔のまま、意味不明な声をこぼす。

「あっと…えと…」

 驚きの目は、真理を見たまま。

「好きとか…嫌いか…とかじゃなくて…」

 ようやくその唇が、意味のある言葉を紡ぎ始める。

「ええと……怖い」

 そして──魔族としては、喜ばしいホメ言葉をもらう羽目となったのだ。

 いま、真理が望む言葉の中では、真反対に近いものだったが。