極東4th

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 またか。

『その感覚』に、真理は眉を寄せた。

 またしても、早紀につっかかる魔族の感触を、味わわされたのだ。

 昨日の今日を考えると、イデルグの息子だろうと予想出来た。

 招待から帰りついた昨晩。

 真理は、修平を通じてイデルグの息子二人の情報を、軽く仕入れていた。

 美濃と甲斐。

 同じ学校の、一年であることが分かった。

 ナリはでかいが、真理よりも年下だったのだ。

 あの育ちすぎの身体は、遺伝と父親の影響だろう。

 しかし、昼休みというイヤな時間に、ちょっかいをかけられた。

 放課後と違い、どこもかしこも生徒で溢れている。

 そんな時間に、ロークラスに足を運ぶのは、非常に不本意だったのだ。

 しょうがなく、真理は立ち上がった。

 放っておける魔女なら、どれだけ面倒は減るだろう。

 トゥーイの憑き魔女ならば、おそらくここまで手間をかけることもないと思われる。

 あの憑き魔女も、所詮は魔女なのだから、何らかの思惑を身の内で育てているに違いないが。

 しかし、それが内側でとどまっているだけなら、主としては問題ないのだ。

 だが、早紀はそういうワケにはいかない。

 いまようやく彼女は、魔女としての自覚に踏み込んだばかりで。

 そんな不安定な状態を、イデルグの息子たちにかき回されたくなかったのだ。

 もしも、早紀が──どちらかの誘惑に負けたらどうなるのか。

 そう考えると、真理は非常に不快だったのだ。

 ロークラスに足を運ぶ事実よりなお、不快だったのである。

 真理の鎧でありながら、心をイデルグ家に持っていかれる。

 その身体の一部を、イデルグ家に持っていかれるのだ。

 それらの想像は、多大なる不愉快を、真理の中で生んでいた。

 理由など分かっている。

 早紀は、この『カシュメルの鎧』なのだから。

 その魂も心も身体も全て、カシュメルのものでなければならない。

 そう。

 全て、カシュメルのものでなければならないのだ。