極東4th

 憑き魔女という言葉に、早紀が惹かれないはずがない。

 二回死ぬという、よく分からない確率の元に生み出される、鎧の化身のような生き物。

 それが、自分であり、零子でもある。

 イデルグは、父とその憑き魔女の子だ、という話までは聞いた。

 そんな男だからこそ、自分が鎧を受け継ぐ時に、憑き魔女を作りたかったのか。

「魔女というのは、不安定すぎて、思い通りに契約が運ばなかった…」

 美濃の目が、早紀を映す。

「トゥーイ卿が、憑き魔女を作ったのは、うちの父に影響を受けていたせいで、意図的なものだ…成功したのは幸運だったがな」

 早紀を見ながらも、零子の話題が出る。

 声には、微かながら羨望を感じた。

 はっと。

 早紀は、零子のことを認識した。

 同じ憑き魔女、という意識はちゃんとあったのだ。

「…零子さんも憑き魔女なら…彼女を口説けばいいんじゃないですか?」

 イデルグが、憑き魔女という肩書のみにこだわっているなら、早紀じゃなくてもいいはずだ。

「それが、トゥーイ卿の憑き魔女は…彼の実験材料でな」

 美濃は、やはりさらりと──奇妙な言葉を吐いた。

「うちの父親の能力が、たった一回のまぐれなのか、それとも憑き魔女特有の遺伝もあるのか…そのために、憑き魔女を自力で用意したわけだ」

 後継ぎにするかは、分からんがな。

 美濃は、あっさりと言葉を続けた。

 詳しく考えたくない。

 早紀は、耳を覆いたくなった。

 零子を思い出す。

 ハイクラスの魔女たちを見ながら、あの中の誰かがトゥーイの正妻になるのだと、悟った目と言葉をしていた。

 きっと自分の運命を、彼女は知っているのだ。

 何故そんなひどい運命と、折り合いをつけているのか。

 大体。

 実験というのならば、イデルグ家だってさして変わらない。

 相手が、零子か早紀かの違いだけだ。

 警戒のまなざしで、美濃を見る。

 しかし。

「お前も…トゥーイ卿には突っかかられただろう? 血筋から、遺伝能力から、丸裸にされないよう気をつけるんだな」

 話の流れは──実験材料という要点は、軽く流してしまったのだった。