極東4th

-----
 これまで、外部と接触する機会は、本当に少なかった。

 早紀は、それを身にしみて感じたのだ。

 子供の頃の、母とのぼやけた記憶、空気のような学校、そして縁の切れてしまった伊瀬。

 彼女の知る外部の世界など、そんなものだった。

 真理の鎧となることで、他の鎧の者たちと接触することも起きたが、それはあくまでも鎧の立場として、の話だ。

 彼女が、メインになることはない。

 なのに。

 イデルグ家で、いきなり早紀はメインディッシュに据えられてしまった。

 イデルグの当主に、そして双子の息子に。

 甲斐の言葉から推測するならば、彼は早紀との間に子供を望んでいる。

 彼女が魅力的だから、という意味ではない。

 それくらい、分かっている。

 相手は、彼女の名前さえ知らなかったのだから。

 おそらく。

 早紀の能力を持つ子が、欲しいのだ。

 そんなに、魔族に効く力が欲しいのだろうか。

「…双子とは、関わるな」

 真理の声に、早紀はびくっとした。

 イデルグ家からの帰り道──車の中であることを、すっかり忘れていたのだ。

 関わりたいわけではない。

 子供のことも、余りに飛躍しすぎていて、冗談としか思えないほどである。

「それと…」

 答えない早紀など気にせず、真理は言葉を続けた。

 一瞬止まった言葉に、ふっと彼女の意識が引っ張られる。

「それと…ベルガー卿には…注意しておけ」

 珍しく、歯切れの悪い言葉。

 言うべきか言わないべきか、そんな葛藤でもあったのだろうか。

 1stの次は、2ndの話ときた。

 それもまた、彼女の能力のせいなのか。

「面倒くさいなあ…」

 ぽつりと、早紀は呟いていた。

 はっと口を押さえる。

 いま、本当に無意識に、本音が口をついていたのだ。

 真理に、冷たい息を吐かれるんではないかと、びくびくしながら彼を見ると。

「ああ、まったくだ…」

 ため息をつきながら、彼はやはり本音を口にするではないか。

 普通の会話が──成立してしまった。