極東4th


 双子が言い争いを始めたのを、真理は不機嫌に眺めていた。

 罵り合う前に、この二人にはすべきことがあるはずだ。

 明らかな大差をつけて相手をねじ伏せるか、継承権を剥奪すべく陥れるか、能力が拮抗しているならば、命がけで相手の息の根を止めるか、である。

 まだ心の中に、ほぼ同時に生まれた兄弟という、しがらみが残っているのか。

 しかし、そんなことは結局真理にとって、どうでもいいことだ。

 他人のお家騒動に、首を突っ込む気も興味もないのだから。

 真理が、ホールを出ようと思った時。

 視線を感じた。

 早紀だ。

 大きな二人の男の物陰から、真理の方を見ている。

 厄介な、彼の鎧。

 極東の1stから3rdまでが、早紀の能力に違う意味で興味を抱いている。

 イデルグは取り込みたがり、ベルガーは煙たがり、トゥーイは──彼も煙たがっている方だ。

 だが。

 今日のイデルグとその息子二人は、おそらく大きな勘違いをしていた。

 彼女を、標準的な魔女だと思っているだろう、という点だ。

 父方の血筋はいまだ不明だが、精神的には純粋な魔女ではない。

 今日、ようやくソレに足を踏み込んだばかりの、人もどきだったのである。

 だから。

 魔女として扱ったところで、早紀が揺らぐとは思えなかった。

 そんな彼女に。

 真理は軽く顎を動かし、早紀に帰る意図を告げた。

 一瞬。

 彼女の目が、しっかりと真理を捉える。

 その視線が、次第にうつむき気味に下に落とされたかと思うと。

 一歩目を、踏み出した。

「あ…おい」

 双子の頭の悪そうな方が、彼女を呼び止めようとする。

 早紀は視線を落としたまま、しかし、足は止めなかった。

 真理の側まできて、ようやく動きを止めたのだ。

「どうぞ…ごゆっくり」

 戻ってきた彼女の行動に、知らず深い満足を覚えながら──真理は、冷たい皮肉だけを残して立ち去ったのだった。