双子が言い争いを始めたのを、真理は不機嫌に眺めていた。
罵り合う前に、この二人にはすべきことがあるはずだ。
明らかな大差をつけて相手をねじ伏せるか、継承権を剥奪すべく陥れるか、能力が拮抗しているならば、命がけで相手の息の根を止めるか、である。
まだ心の中に、ほぼ同時に生まれた兄弟という、しがらみが残っているのか。
しかし、そんなことは結局真理にとって、どうでもいいことだ。
他人のお家騒動に、首を突っ込む気も興味もないのだから。
真理が、ホールを出ようと思った時。
視線を感じた。
早紀だ。
大きな二人の男の物陰から、真理の方を見ている。
厄介な、彼の鎧。
極東の1stから3rdまでが、早紀の能力に違う意味で興味を抱いている。
イデルグは取り込みたがり、ベルガーは煙たがり、トゥーイは──彼も煙たがっている方だ。
だが。
今日のイデルグとその息子二人は、おそらく大きな勘違いをしていた。
彼女を、標準的な魔女だと思っているだろう、という点だ。
父方の血筋はいまだ不明だが、精神的には純粋な魔女ではない。
今日、ようやくソレに足を踏み込んだばかりの、人もどきだったのである。
だから。
魔女として扱ったところで、早紀が揺らぐとは思えなかった。
そんな彼女に。
真理は軽く顎を動かし、早紀に帰る意図を告げた。
一瞬。
彼女の目が、しっかりと真理を捉える。
その視線が、次第にうつむき気味に下に落とされたかと思うと。
一歩目を、踏み出した。
「あ…おい」
双子の頭の悪そうな方が、彼女を呼び止めようとする。
早紀は視線を落としたまま、しかし、足は止めなかった。
真理の側まできて、ようやく動きを止めたのだ。
「どうぞ…ごゆっくり」
戻ってきた彼女の行動に、知らず深い満足を覚えながら──真理は、冷たい皮肉だけを残して立ち去ったのだった。


