極東4th

 はっと。

 我に返った時──早紀は、立ち尽くして前を見ていた。

 暗いはずなのに、世界ははっきりと見えている。

 たくさんの、骨董品が置かれている部屋の中。

 真理が立っていた。

 そして、早紀を見ていた。

 真理の後ろには、修平もいる。

 あ、れ?

 見覚えのある構図に、早紀は混乱していた。

 そして。

 何より彼女を混乱させたのは。

 真理の足元には。

 少女が倒れていた。

 真っ黒な髪と、真っ赤な血の海。

 その血が、まるで生きているかのように、いま立っている早紀の方へと吸い上げられていく。

 干からびていく少女。

 それが、一体誰なのか──早紀は知っていた。

「……!」

 何か言おうとして、口がきけないことに気づく。

 動こうとして、自分の身体がまるで金属のようにこわばっていることにも気づく。

 しかし、動くことは出来た。

 ズシン。

 一歩踏み出すと、足元の床が沈んだ。

 その言い知れない感覚におののいて、早紀は次の足を踏み出せなかった。

 代わりに。

 真理が、歩み寄ってきた。

 気づいたら、早紀は彼を少し見下ろすような形だった。

 ありえない角度。

 早紀を見上げる真理の目は、冷たくも深く差し込むような色をしている。

 いままで、早紀の見たことのない瞳。

 そんな彼が、ふっと視線を落とし、自分の右手の人差し指を噛む仕草を見せた。

 鮮やかな、赤い血がぷくりと浮き上がる。

 その指を、真理は早紀に向かって伸ばした。

 彼女の目と目の間──眉間か額の辺りに、生ぬるい感触が触れる。

 しゅるんと。

 指先が、そのまま弧を描く。

 ガシャンッ。

 全身の関節が。

 金属的な音を立てて外れた気がした。