極東4th

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 ど、どうしよう。

 早紀は、鎧の側で固まったまま動けずにいた。

 イデルグの息子と思われる男は、すぐ近くに迫っている。

 彼女の存在に、気づかないままだ。

 自分の能力を、疑っているわけではない。

 子供の頃から、無意識に使ってきた能力だったし、蝕の戦場でもその力はいかんなく発揮されているようだ。

 しかし、さすがに目の前に来れば、分かるのではないだろうか。

 ましてや、彼は早紀の能力を知っているようだ。

 知っているからこそ、強く意識をこらせば気づかれると思った。

 零子も、タミも──イデルグも、「いる」と分かっているのならば、速さの差こそあれ、早紀を見つけたではないか。

 は、離れよう。

 ゆっくりそっと、ホールから出て行こう。

 早紀が、そーっと動こうとした瞬間。

 男は、ぴたっと動きを止めた。

 まるで。

 耳を澄ますみたいに。

 早紀も、足をぴたっと止めた。

 視線が。

 イデルグの息子の視線が、軽く周囲に巡らされる。

 気配はなくとも、空気が動くのは止められない。

 足音だって、ほんのわずかくらい、生まれているのかもしれない。

 あの父の血を、受け継いでいるのだ。

 鋭くても、おかしくなかった。

 動きを止めたおかげか、幸い見つけられなかったようだ。

 しかし。

「いるのか? カシュメル卿の魔女」

 堂々と呼びかけられて、更にどきっとする。

 大胆で、効果的な方法だった。

 早紀は、客人で。

 もしこの呼びかけに応じず、自力で彼に見つけられてしまったら、スパイ容疑くらいかけられそうだ。

 やましいことが、ないのならば。

「います…」

 カシュメル卿とやらのために──答えておくべきだった。