極東4th

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「近々…ベルガー卿にも、呼ばれるかもしれんぞ」

 ソファに、深々と埋もれながら、イデルグは使用人に酒の手配をさせた。

 真理はその向かいに腰を下ろしながら、彼の話を聞く。

 ベルガー卿。

 極東の2ndだ。

「ベルガー卿まで、貴沙という魔女に求婚でもしていたのですか?」

 ため息をつきながら、真理は返す。

 早紀の周囲が、とてつもなく騒々しくなってくる。

 それは、非常に面白くないことだった。

「いや、違うな。ベルガー卿は、純粋にあの娘の能力に興味があるようだ」

 ただし、悪い意味で、だ。

 付け足された言葉に、真理は目を細めた。

 悪い意味。

 理解は出来た。

 要するに、真理の鎧の能力を──邪魔だ、と思っているのだろう。

 魔族の力は、物理能力以外は、魔族には効きづらい。

 そこへ、イレギュラーの早紀が現れたのだ。

「あの娘の弱みを探って、お前さんを失脚させるかもしれんぞ」

 同じ極東のメンバーとは言え、結局は魔族同士。

 2ndの地位を脅かす可能性の高い真理の芽を、早いうちに摘んでおきたいのだろう。

 事実、早紀には父親という弱味がある。

 誰もまだ、その真実にたどり着いていないからこその弱味だ。

「そこで、だ…」

 運ばれてきた酒を、イデルグは手に取った。

 真理の前にも出されたが、手は伸ばさない。

「オレも、貴沙の娘がベルガー卿に食いものにされるのは、寝覚めが悪いからな…ひとつ提案がある」

 ごくり、と酒を飲み干す太い喉。

「オレの息子のどっちかに、あの娘をくれてやる気はないか? オレの身内が絡めば、さすがのベルガー卿も手出しはしないだろう」

 予想外すぎる提案だった。

 イデルグは、本気そのものの顔で。

 真理は、凍りついたままの顔で──しばし、見詰め合ってしまった。