晩餐後、すぐに帰る、という方向にはならなかった。
イデルグは真理を連れ立って、話をするために別室へと向かってしまったのだ。
ぽつん。
残されたのは、早紀だ。
勿論。
イデルグは、使用人に彼女を他の部屋に案内するよう命じたのである。
そして、二人は先に行ってしまった。
ぽつん。
使用人は、主の命令を遂行しなかった。
いや、出来なかったのだ。
何故なら、早紀の存在を一瞬で見失ってしまったからである。
おかげで。
彼女はまるで空気のような存在感で、手持ち無沙汰になってしまったのだ。
まあ。
ある意味、気楽だった。
どこにいたとしても、どんな変な行動をしたとしても、誰もそれを認識できないということである。
よその魔族の屋敷など、入ったことのない早紀は、ゆっくりと歩き出した。
大きなホールを覗くと、黒い甲冑が飾ってあるのが見える。
イデルグが身につけている本物かと、近づいて見てみたが、造型は全然違った。
ただの飾りなのだろう。
貴重な本物を、こんなところに置きっぱなしにしているはずがない。
息子が二人、鎧の後継を狙っているのだから、なおさらだ。
ふと。
背後に気配を感じて、早紀はどきっとしながら振り返った。
誰かが入ってきたのだ。
「ふぅ…」
ため息混じりに、その人物は早紀の方へと近づいてくる。
少年──というには、既に身体がきっちりと出来上がっている気がした。
しかし、一目で分かった。
イデルグの息子だと。
彼の血を色濃く受け継いでいる、力強い肉体派だったのだ。
双子の片割れだろう。
目は、何も見てはいない。
早紀の存在に、気づいていないのだ。
「見えない魔女って…ホントかよ」
難しい顔をしながら、ぼそっと呟かれた言葉は──早紀の心臓を、強く跳ねさせたのだった。
イデルグは真理を連れ立って、話をするために別室へと向かってしまったのだ。
ぽつん。
残されたのは、早紀だ。
勿論。
イデルグは、使用人に彼女を他の部屋に案内するよう命じたのである。
そして、二人は先に行ってしまった。
ぽつん。
使用人は、主の命令を遂行しなかった。
いや、出来なかったのだ。
何故なら、早紀の存在を一瞬で見失ってしまったからである。
おかげで。
彼女はまるで空気のような存在感で、手持ち無沙汰になってしまったのだ。
まあ。
ある意味、気楽だった。
どこにいたとしても、どんな変な行動をしたとしても、誰もそれを認識できないということである。
よその魔族の屋敷など、入ったことのない早紀は、ゆっくりと歩き出した。
大きなホールを覗くと、黒い甲冑が飾ってあるのが見える。
イデルグが身につけている本物かと、近づいて見てみたが、造型は全然違った。
ただの飾りなのだろう。
貴重な本物を、こんなところに置きっぱなしにしているはずがない。
息子が二人、鎧の後継を狙っているのだから、なおさらだ。
ふと。
背後に気配を感じて、早紀はどきっとしながら振り返った。
誰かが入ってきたのだ。
「ふぅ…」
ため息混じりに、その人物は早紀の方へと近づいてくる。
少年──というには、既に身体がきっちりと出来上がっている気がした。
しかし、一目で分かった。
イデルグの息子だと。
彼の血を色濃く受け継いでいる、力強い肉体派だったのだ。
双子の片割れだろう。
目は、何も見てはいない。
早紀の存在に、気づいていないのだ。
「見えない魔女って…ホントかよ」
難しい顔をしながら、ぼそっと呟かれた言葉は──早紀の心臓を、強く跳ねさせたのだった。


