極東4th

 早紀が、複雑な気持ちのまま、晩餐の席に座っていると。

「…お子さんは?」

 ずっと黙っていた真理が、するりと声を吐き出す。

 冷気もないが、興味もない口ぶりだった。

 興味もないのに聞くということは、話を別方向へそらそうという思惑があるのだろう。

 早紀の母親や、出生の話をあまり蒸し返されたくないのだ。

 それは彼女も同じだったので、話の行方が気になり、真理の声を追うように、イデルグの方を見た。

「ああ、三人いる。男は二人…双子だ」

 ニヤリと、1stは笑う。

 さすがは魔族である。

 好きだった魔女に袖にされても、そのまま諦めきれずに操立てなど、するはずがなかった。

 そのニヤリは、どこか本気で面白がっている顔である。

「…それは、お気の毒に」

 真理は、やはり興味のない口調で、社交辞令的に返す。

 お気の毒?

 早紀は、意味が分からなかった。

 双子。

「男が二人いるだけでも厄介なのに、双子だぞ…まあ、せいぜい殺しあってくれ、ってとこだ」

 イデルグの笑いに、早紀は動きを一瞬止める。

 何か、物凄い発言を聞いた気がしたのだ。

 いやな理解が、彼女の頭に浸透していく。

 そうか、と。

 イデルグの息子ということは、彼が引退した後、鎧を引き継ぐということだ。

 しかし、鎧は一つ。

 受け継げるのは、たった一人だ。

 普通ならば、一番上の男が継ぐ気がするが、双子ではどちらも納得しかねるだろう。

 しかも、魔族なのだ。

 おとなしく、相手に鎧を譲るはずがない。

「ついでに、ご自身が殺されないようご注意を」

 しれっと真理も、怖い言葉を上乗せする。

「ははは、オレを殺せるならいっそ上出来だ」

 極東のトップは、身体だけではなくツラの皮もしっかり鍛えているようだった。