極東4th

 ああ、そうか。

 分かってきた。

『早紀』は、分かってきた。

 自分は、死んだのだ。

 真理に喉をかききられて。

 ここは、死後の世界だろうか。

 この鎧の存在は、死神だろうか。

 何故、自分は魔女と呼ばれるのか。

 そんなたくさんの疑問よりも。

 そうか。

 死んじゃったのか。

 早紀は、小さなため息を落としていた。

 図太く静かに、空気のように生きてきたが、それでも早紀は生き延びることは出来なかった。

 記憶が、少しずつつながっていく。

 自分が、真理のいる屋敷に引き取られたのも、何だか分からないこの死のためだと修平は言っていた。

 むかしむかし、あるところに。

 そんな都合のいいおとぎ話など、やっぱりなかったのだ。

 そして、真理が自分を殺した。

 何だろう。

 その事実が、無性に悲しかった。

「そうね」

 早紀は、棘だらけの鎧を抱きしめようと手を伸ばした。

「そうね…また、死んじゃおうか」

 むかしむかし。

 そんなおとぎ話さえ、思い出さないくらいの虚ろな存在になってしまいたかった。

 躊躇なく。

 早紀は、鎧を抱きしめた。

 強く、強く。

 いくつもの棘が、自分の身体を貫いたのを感じながら。

「何だ…泣いてやがるのか?」

 馬鹿な奴だ。

 鎧の男が──微かに笑った。

 瞬間。

 黒い炎が、鎧の男と自分を囲むように燃え上がった。

「合格だ、魔女…お前とひとつになってやろう」

 早紀を刺し貫いた棘が、自分を絡め取るように伸び、鎧の中に取り込もうとする。

 黒く冷たい金属の中に、彼女の身体は沈んでいく。

 中は──からっぽだった。

 空洞というより、空虚。

 その隙間を埋めるように、早紀は取り込まれた。

「死×死が、何か知ってるか、魔女?」

 鎧の内側を伝って、声が鼓動のように早紀に押し寄せる。

 笑う、鼓動。

 その鼓動に、自分が溶けていくのを感じながら――早紀は思考力を失って、意識を閉じたのだった。