極東4th

---
 ダシ。

 そんな言葉で片付けられて、真理は非常に不快だった。

 血統を差し置いて、イデルグが早紀に会いたがっていたのだと分かったからだ。

 しかも。

 彼女の珍しい能力を知りたくて、などという理由ではなく。

 晩餐室の席についた後も、イデルグは早紀を見ていた。

 そうしていないと見失う可能性があるのだから、しょうがないのは分かるのだが。

 おそらく、特殊な能力のせいで、彼女の出自を調べさせていたのだろう。

 父親はともかく、母親まではすぐにたどれるのだから。

 そして、母親はイデルグの知り合いだった。

 正確には知り合いというより──

「貴沙は、あの当時…魔女の中でも問題児でな」

 大きな手でグラスを持ち上げながら、1stは語り始める。

 魔女が魔族の中での問題児なら、いつものことだと彼は言った。

 わざわざ言葉にまで、されることはないのだと。

 貴沙が、問題児と言われているのは。

「一人で天族にちょっかいをかけたり、海族を騒がせたり…騒々しい女だった」

 イデルグの話に、早紀は唇を引き結んだまま。

 ちらりと真理を見るのは、どう反応したらいいのか分からないからなのか。

「当時、オレは3rdでな。1stのカシュメル卿…いわゆる卿の先代に頼まれて、ちょっとばかし灸をすえることになったわけだ」

 彼は、グラスを宙に軽く掲げた。

 空間がひねられる。

 歪んだ空間が戻った時。

 その宙空には、魔女が現れた。

 クラシカルなのは、マントと帽子だけ。

 レザーのミニスカ、深く胸元の開いた服に、あらわなヘソ。

 派手な化粧と、帽子から飛び出すように跳ねる髪。

 そんな魔女が、こっちをとんがった目で睨んでいた。

 イデルグがグラスを揺らすと、映像は波紋を生んだ後に消滅する。

「いい女だろう?」

 彼は、早紀を見ながら言った。

「灸をすえるつもりが、こっちが火傷させられるハメになったんだからな」

 貴沙の思い出と共に──彼は、グラスを飲みほしたようだった。