「よく来たな」
イデルグという男が、風変わりであるということに──早紀は、すぐに気がついた。
たとえ招待したとは言え、玄関まで彼らを迎えてくれたのだ。
真理の斜め後ろにいた彼女は、その巨体を驚きとともに見上げた。
正装程度では、決して隠すことの出来ない見事な肉体だ。
海族とも、決してひけを取らない、肉体派の魔族。
尖ったタテガミのような黒髪は、猛獣を想起させる。
その高い位置の視線が。
不自然なほど、一気に下げられる。
真理を見る高さではない。
もっと後ろの空間の、低いものを見ようとするかのようだ。
「本日はお招きいただき…」
真理の挨拶も聞かない視線は、ついに止まった。
早紀を、捕らえたのだ。
さすがは、1stというべきだろうか。
零子やタミとは違い、少しの間はあったものの、自力で彼女を見つけたのである。
「悪いな、カシュメル卿」
ぽんっと。
大きな手が、軽く真理の肩に置かれた。
そんな挨拶でいいのだろうかと思ったが、自分の考えが根本から間違っていることを、早紀は知るのだ。
「今日の卿はダシだ…キサの娘だってな…この憑き魔女」
イデルグの巨体は、信じられない身軽さで真理をかわすと、早紀の目の前に割り込んでくる。
そして。
キサ、と言った。
貴沙──と、おそらく。
見下ろす目に、害意は感じない。
しかし、反射的に早紀は身構えてしまった。
あの、ロクな遺産を残さなかった、諸悪の根源である実母の名前だったからだ。
イデルグにも、何か恨みを買っているのか、と。
「全然似てないな…残念だ」
まじまじと早紀の顔を覗き込みながら、心底残念そうにイデルグは言った。
その表情を見た刹那。
あっ。
彼が、母に抱いていた感情が何なのか──分かった気がした。
イデルグという男が、風変わりであるということに──早紀は、すぐに気がついた。
たとえ招待したとは言え、玄関まで彼らを迎えてくれたのだ。
真理の斜め後ろにいた彼女は、その巨体を驚きとともに見上げた。
正装程度では、決して隠すことの出来ない見事な肉体だ。
海族とも、決してひけを取らない、肉体派の魔族。
尖ったタテガミのような黒髪は、猛獣を想起させる。
その高い位置の視線が。
不自然なほど、一気に下げられる。
真理を見る高さではない。
もっと後ろの空間の、低いものを見ようとするかのようだ。
「本日はお招きいただき…」
真理の挨拶も聞かない視線は、ついに止まった。
早紀を、捕らえたのだ。
さすがは、1stというべきだろうか。
零子やタミとは違い、少しの間はあったものの、自力で彼女を見つけたのである。
「悪いな、カシュメル卿」
ぽんっと。
大きな手が、軽く真理の肩に置かれた。
そんな挨拶でいいのだろうかと思ったが、自分の考えが根本から間違っていることを、早紀は知るのだ。
「今日の卿はダシだ…キサの娘だってな…この憑き魔女」
イデルグの巨体は、信じられない身軽さで真理をかわすと、早紀の目の前に割り込んでくる。
そして。
キサ、と言った。
貴沙──と、おそらく。
見下ろす目に、害意は感じない。
しかし、反射的に早紀は身構えてしまった。
あの、ロクな遺産を残さなかった、諸悪の根源である実母の名前だったからだ。
イデルグにも、何か恨みを買っているのか、と。
「全然似てないな…残念だ」
まじまじと早紀の顔を覗き込みながら、心底残念そうにイデルグは言った。
その表情を見た刹那。
あっ。
彼が、母に抱いていた感情が何なのか──分かった気がした。


