極東4th

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 魔女だ。

 いま、真理の目の前に立っている女は、間違いなく魔女だ。

 普段着ない服と、薄くすかれた髪と、表情まで塗りこめてしまったかのような化粧。

 額の傷も、うまく隠されて分からない。

 しかし、目の中だけが、まだ早紀の面影を残している。

 人間に育てられた、黒になりきれない色。

 だが、そのたった一つの不完全さが、それ以外の黒を、よりくっきりと浮かび上がらせていた。

 本当に、昨日まで一緒に住んでいた、あの早紀なのか。

 分かっていながらも、真理は目の前の女を確認してしまう。

 変貌しすぎた理由のひとつは、髪だったのかもしれない。

 育ての母親の写真を見て、何故彼女が髪型にこだわっていたのかは理解できた。

 だが、その髪を彼女は落とした。

 ついに、というべきか。

 ついに、早紀はあの母親にこだわるのをやめた、という決意に見えた。

「いかがでしょう」

 タミが、まっすぐに問いかけてくる。

 彼女の存在を、つかの間ではあるが忘れていた事実に、はっとした。

「さがっていい…」

 彼は、質問に直接答えず、タミを下がらせようとした。

 不満があるのならば、最初にそう言う。

 何も言わないのだから、問題はない──そう悟れと、暗に伝えたのだ。

 タミは、一瞬だけ不満そうにそこに佇んだ後、部屋を出て行った。

 昨日も、こういうシーンがあった。

 残されたのは、二人。

 昨日の真理は、彼女の額に歯を立てて。

 今日の真理は。

「魔女に…なったか」

 一言だけ、語りかけていた。

 ゆらぐ、瞳。

 しかし、赤く染められた唇は、きゅっと強く引き結ばれた。

 そう。

 彼女は、魔女にならねばならない。

 これまでも、確かに早紀は遺伝的には魔女だった。

 そうではなく、本当の意味での魔女になったかと聞いたのだ。

 早紀は、何も答えない。

 だが。

 否定もまた、なかった。