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夕刻。
まだ出かける時間には少し早いが、真理は支度を終えていた。
黒いシャープなスーツに、リボンタイ。
代々受け継がれる、古代の覇者から下賜された、闇と同じ素材で出来たマント。
髪もなでつけるように仕上げ、手袋の準備も出来ている。
扉を見る。
そろそろノックがあっても、しかるべきだと思っていたのだ。
朝、タミに任せてからずっと、早紀の姿は見ていない。
女の支度に興味などなかったし、タミならば立場的に、正装の意味をはき違えることはないだろうと思っていたのだ。
扉を見る。
自分の準備を終えてしまうと、何もすることなどない。
扉を見──
刹那。
真理は、吸いかけた息を止めていた。
整然としたノックが、来訪を伝えたからである。
「タミです」
憑き魔女を連れてきた、という言葉と同意の呼びかけだった。
ふぅ、と安堵する。
魔女が、きちんと時間を守ることは少ない。
そういう気がかりがあったための、安堵だろう。
「入れ…」
自分の心を分析しつつ、真理は入室を促した。
澱みない、いつものままのタミが入ってくる。
その後ろから。
「………」
真理は、ほんの2度──首を傾けていた。
そして。
3秒止まった。
誰か、分からなかったのだ。
頬を覆うように流れる短い黒髪が、輪郭を錯覚させる。
しっかりと描かれた目元のメイクが、瞳をいつもより大きく感じさせる。
ハイネックの黒いレースが、そのまま膝下まで流れ、やはり黒いレースの靴下で足元まで黒く染め上げていた。
引き結ばれた赤い唇は、気軽に声を発しそうにない。
そこにいたのは。
いつもの早紀ではなく──魔女だった。
夕刻。
まだ出かける時間には少し早いが、真理は支度を終えていた。
黒いシャープなスーツに、リボンタイ。
代々受け継がれる、古代の覇者から下賜された、闇と同じ素材で出来たマント。
髪もなでつけるように仕上げ、手袋の準備も出来ている。
扉を見る。
そろそろノックがあっても、しかるべきだと思っていたのだ。
朝、タミに任せてからずっと、早紀の姿は見ていない。
女の支度に興味などなかったし、タミならば立場的に、正装の意味をはき違えることはないだろうと思っていたのだ。
扉を見る。
自分の準備を終えてしまうと、何もすることなどない。
扉を見──
刹那。
真理は、吸いかけた息を止めていた。
整然としたノックが、来訪を伝えたからである。
「タミです」
憑き魔女を連れてきた、という言葉と同意の呼びかけだった。
ふぅ、と安堵する。
魔女が、きちんと時間を守ることは少ない。
そういう気がかりがあったための、安堵だろう。
「入れ…」
自分の心を分析しつつ、真理は入室を促した。
澱みない、いつものままのタミが入ってくる。
その後ろから。
「………」
真理は、ほんの2度──首を傾けていた。
そして。
3秒止まった。
誰か、分からなかったのだ。
頬を覆うように流れる短い黒髪が、輪郭を錯覚させる。
しっかりと描かれた目元のメイクが、瞳をいつもより大きく感じさせる。
ハイネックの黒いレースが、そのまま膝下まで流れ、やはり黒いレースの靴下で足元まで黒く染め上げていた。
引き結ばれた赤い唇は、気軽に声を発しそうにない。
そこにいたのは。
いつもの早紀ではなく──魔女だった。


