タミのこだわりは、半端ではなかった。
出かけるのは、夜からだと聞いたのに。
普段から、自分のスタイルにはポリシーがあるのだろうとは分かっていたが、早紀に服を貸すだけでは終わらなかったのだ。
一度着せた服を、ひんむかれた後──髪を、切られた。
ハサミを出された瞬間、喉にせり上がった感情を、早紀は言葉に出来なくて。
母を、忘れないための髪だった。
だが。
もはや、誰にも義理立てをする必要などないのだと。
そう思うと、ひどい葛藤が喉の中で渦巻いたのだ。
しかし。
髪を切るのもいいかもしれない──そう、観念してもいた。
母への愛の感情は、決して消えてはいない。
ただ、会うことはもう出来ないのだ。
生きている事実だけを喜び、それをただ、愛に変えて行こうと思った。
その踏ん切りとして、髪を切るというのはいいことに感じたのである。
シャリッ。
重苦しいおかっぱを、タミが削ぎ落としていく。
頬から顎のフェイスラインに沿うように、髪が流される。
前髪も。
トップも。
随分重かったのだと、足もとに散り落ちる髪の量でよく分かった。
髪を切り終えるや、今度はバスルームに連れ込まれる。
奇妙な形の薬の瓶が、山ほど並べられていて。
バスタブに落とすもの、磨き上げるためのもの。
むせかえる不思議な香りに包まれながら、早紀はタミに磨き上げられた。
完璧主義者。
まさに、その言葉がぴったりだ。
魔力オタクだとは思っていたが、完璧主義者という素地がオタクを後押ししたのだろう。
身分は、はるかに早紀よりいいはず。
それでも、タミが自分に構うのは、早紀の持つ特殊な能力について知りたいからだろう。
魔力オタクとして、完璧主義者として、プライドを犠牲にしても手に入れたいに違いない。
プライドを犠牲にしても──その点が、タミのすごいところだと思った。
目的のためなら、曲げられないものでも曲げてくる。
少しだけ。
好きだな、と思った。
出かけるのは、夜からだと聞いたのに。
普段から、自分のスタイルにはポリシーがあるのだろうとは分かっていたが、早紀に服を貸すだけでは終わらなかったのだ。
一度着せた服を、ひんむかれた後──髪を、切られた。
ハサミを出された瞬間、喉にせり上がった感情を、早紀は言葉に出来なくて。
母を、忘れないための髪だった。
だが。
もはや、誰にも義理立てをする必要などないのだと。
そう思うと、ひどい葛藤が喉の中で渦巻いたのだ。
しかし。
髪を切るのもいいかもしれない──そう、観念してもいた。
母への愛の感情は、決して消えてはいない。
ただ、会うことはもう出来ないのだ。
生きている事実だけを喜び、それをただ、愛に変えて行こうと思った。
その踏ん切りとして、髪を切るというのはいいことに感じたのである。
シャリッ。
重苦しいおかっぱを、タミが削ぎ落としていく。
頬から顎のフェイスラインに沿うように、髪が流される。
前髪も。
トップも。
随分重かったのだと、足もとに散り落ちる髪の量でよく分かった。
髪を切り終えるや、今度はバスルームに連れ込まれる。
奇妙な形の薬の瓶が、山ほど並べられていて。
バスタブに落とすもの、磨き上げるためのもの。
むせかえる不思議な香りに包まれながら、早紀はタミに磨き上げられた。
完璧主義者。
まさに、その言葉がぴったりだ。
魔力オタクだとは思っていたが、完璧主義者という素地がオタクを後押ししたのだろう。
身分は、はるかに早紀よりいいはず。
それでも、タミが自分に構うのは、早紀の持つ特殊な能力について知りたいからだろう。
魔力オタクとして、完璧主義者として、プライドを犠牲にしても手に入れたいに違いない。
プライドを犠牲にしても──その点が、タミのすごいところだと思った。
目的のためなら、曲げられないものでも曲げてくる。
少しだけ。
好きだな、と思った。


