極東4th

「だが、彼女は正装なんて持っていたかな」

 修平が、考え込む仕草をする。

 今夜の招待とやらへの、服装のことを言っているのだろう。

 前に、真理の当主襲名の挨拶の時、早紀は鎧姿だった。

 だから、どんな姿をしていようが、相手には見えなかったのだ。

 だが、今夜は違う。

 極東1stからの、内々ではあるが招待なのだ。

 制服や、普段着で行くわけにはいかない。

 真理は、全て用意してある。

 父から受け継いだものもあるが、ほとんどが自分用にあつらえたものだった。

 だが。

 早紀は、人前に出ることを想定していなかった。

 元々は、鎧として飲み込まれ、外には出てくるはずのなかった魔女である。

「僕が確認して、準備させようか?」

 カシュメル家の後見をやっていたせいか、修平は屋敷内や一族の、こまごましたところまで目を行き届かせている。

 任せておけば、無難にこなすだろう。

 しかし、問題もあった。

 修平に任せれば、早紀の額の傷を見る可能性があったのだ。

 普段ならば、早紀はほぼステルスモードなので、気づかれないまま過ごせたかもしれない。

 そして、修平が気づいたならば、真理に問うことも考えられた。

 印につけられた噛み傷。

「タミに…やらせよう」

 真理は、指名相手を変更していた。

 まだ、タミの方が御しやすいと思ったのだ。

 少なくとも彼女であれば、答えたくないことを答える必要はないし、変な勘繰りをあからさまに見せることもないだろう。

 せいぜい、あれを『折檻』のひとつと思うくらいか。

「そうかい? まあでも…カシュメルじゃない者を、余り深入りさせないようにね」

 修平の目にも、タミは純粋な妻候補には映っていないのだろう。

 連れてきたのは、この男だというのに。

「まめに、実家とやり取りをしてるみたいだよ…普通と言ってしまえば、普通のことだけどね」

 一応用心しろ、と。

 そう言いたいのだ。

「やり取りを…監視しておけ」

 これ以上、面倒を増やすな。

 既に、修平が手配しているだろうことは分かっていたが、本音の一部が唇から零れ落ちてしまった。