---
「折檻されますか?」
タミの言葉に、早紀はうなだれながら笑っていた。
これから自分は、「生きている」という事実を、後悔するほどの責め苦を味わえるのだろうか、と。
それだけのことをしたのだ。
ただ、真理は早紀を殺すことは出来ない。
鎧の憑き魔女だからだ。
真理という宿主からひきはがされ、再び一人の魔女にもどった早紀は、その虚しさを拭えないでいた。
彼と一つになっている時の、たとえようのない充実感を忘れられない自分がいる。
自分は、一人ではなく。
真理から必要とされていて。
その役割を、他の誰とも代われるものではないのだと。
それが一番実感できる瞬間が、鎧の自分だったのだ。
あの感覚は──あの感情には、何と名前をつければいいのか。
「されるのなら…私にお任せなさいませんか?」
タミは、手袋の右手を軽く上げてみせた。
魔力に関する、何らかの能力のある青い手。
その手で、早紀を痛めつけてくれるのか。
他人事のように、彼女は言葉を聞いていた。
しかし。
「俺が決めることだ」
冷ややかな一言が、タミの右手を下げさせる。
「話がそれだけなら…出て行くがいい」
したたり落ちるしずくをそのままに、真理が冷気の息を吐く。
この二人のやりとりを、見たことはほとんどなかった。
しかし、真理の声の響きにこめられているものは、ひややかさと疎外する音。
いまの彼の、機嫌の悪さを表しているのかもしれない。
そして、タミは──カシュメルではない。
自分の血族以外の者に、恥を見られたくないのだろうか。
早紀という名の恥を。
「失礼しました」
タミは、するりと部屋から消えた。
逃げることの出来ない早紀は、ただ立ち尽くす。
真理が、現状に何らかの終止符を打つまで、こうしているしかない。
ふぅ。
息を吐く音。
真理は言った。
「手のかかる女だ」
冷気は──感じなかった。
「折檻されますか?」
タミの言葉に、早紀はうなだれながら笑っていた。
これから自分は、「生きている」という事実を、後悔するほどの責め苦を味わえるのだろうか、と。
それだけのことをしたのだ。
ただ、真理は早紀を殺すことは出来ない。
鎧の憑き魔女だからだ。
真理という宿主からひきはがされ、再び一人の魔女にもどった早紀は、その虚しさを拭えないでいた。
彼と一つになっている時の、たとえようのない充実感を忘れられない自分がいる。
自分は、一人ではなく。
真理から必要とされていて。
その役割を、他の誰とも代われるものではないのだと。
それが一番実感できる瞬間が、鎧の自分だったのだ。
あの感覚は──あの感情には、何と名前をつければいいのか。
「されるのなら…私にお任せなさいませんか?」
タミは、手袋の右手を軽く上げてみせた。
魔力に関する、何らかの能力のある青い手。
その手で、早紀を痛めつけてくれるのか。
他人事のように、彼女は言葉を聞いていた。
しかし。
「俺が決めることだ」
冷ややかな一言が、タミの右手を下げさせる。
「話がそれだけなら…出て行くがいい」
したたり落ちるしずくをそのままに、真理が冷気の息を吐く。
この二人のやりとりを、見たことはほとんどなかった。
しかし、真理の声の響きにこめられているものは、ひややかさと疎外する音。
いまの彼の、機嫌の悪さを表しているのかもしれない。
そして、タミは──カシュメルではない。
自分の血族以外の者に、恥を見られたくないのだろうか。
早紀という名の恥を。
「失礼しました」
タミは、するりと部屋から消えた。
逃げることの出来ない早紀は、ただ立ち尽くす。
真理が、現状に何らかの終止符を打つまで、こうしているしかない。
ふぅ。
息を吐く音。
真理は言った。
「手のかかる女だ」
冷気は──感じなかった。


