極東4th

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「折檻されますか?」

 タミの言葉に、早紀はうなだれながら笑っていた。

 これから自分は、「生きている」という事実を、後悔するほどの責め苦を味わえるのだろうか、と。

 それだけのことをしたのだ。

 ただ、真理は早紀を殺すことは出来ない。

 鎧の憑き魔女だからだ。

 真理という宿主からひきはがされ、再び一人の魔女にもどった早紀は、その虚しさを拭えないでいた。

 彼と一つになっている時の、たとえようのない充実感を忘れられない自分がいる。

 自分は、一人ではなく。

 真理から必要とされていて。

 その役割を、他の誰とも代われるものではないのだと。

 それが一番実感できる瞬間が、鎧の自分だったのだ。

 あの感覚は──あの感情には、何と名前をつければいいのか。

「されるのなら…私にお任せなさいませんか?」

 タミは、手袋の右手を軽く上げてみせた。

 魔力に関する、何らかの能力のある青い手。

 その手で、早紀を痛めつけてくれるのか。

 他人事のように、彼女は言葉を聞いていた。

 しかし。

「俺が決めることだ」

 冷ややかな一言が、タミの右手を下げさせる。

「話がそれだけなら…出て行くがいい」

 したたり落ちるしずくをそのままに、真理が冷気の息を吐く。

 この二人のやりとりを、見たことはほとんどなかった。

 しかし、真理の声の響きにこめられているものは、ひややかさと疎外する音。

 いまの彼の、機嫌の悪さを表しているのかもしれない。

 そして、タミは──カシュメルではない。

 自分の血族以外の者に、恥を見られたくないのだろうか。

 早紀という名の恥を。

「失礼しました」

 タミは、するりと部屋から消えた。

 逃げることの出来ない早紀は、ただ立ち尽くす。

 真理が、現状に何らかの終止符を打つまで、こうしているしかない。

 ふぅ。

 息を吐く音。

 真理は言った。

「手のかかる女だ」

 冷気は──感じなかった。