そして真理は、理不尽な女の前に立つ。
二人──ずぶ濡れのまま。
しかも、その水は塩水というおまけ付きだった。
早紀が囚われていたのは、海中だったのである。
自室の床を海水で汚しながら、真理は魔女を見下ろしていた。
彼女はうなだれていて、死刑判決を待っているようにも見える。
ふらふらと家を出て、海族に捕まって殺されかけてました、など失態と呼べるレベルではない。
青い被膜の向こう。
真理は、海中で見たのだ。
彼女の首にかかる、男の手を。
正確には、早紀の魔力の糸が、穴を穿った瞬間に見えたのだ。
何を、素直に殺されかけている。
真理は、目を見開いていた。
そして──糸の穿った穴を引き裂いたのだ。
海族の男を、見た。
生まれて初めて見る、青の一族。
氷の壁を突き破り、彼は水の主の顔をして、闇の鎧を見据えたのである。
自分が生身であり、相手が鎧持ちの魔族であったとしても、一切の脅えも怯みもなかった。
あの目は。
戦う者の目だった。
上に立ち、殺せる者の目だった。
本能的に真理は気づいたのだ。
海族と蝕を争うことになったならば、この男と相対することになろう、と。
確かに、男は早紀を殺そうとしていた。
だが。
殺し方の、手ぬるさが気になってもいたのだ。
その気になれば、早紀は一瞬で絶命させられただろう。
憎い魔族の女を殺す方法とは、とても思えなかった。
そして。
男は、早紀を帰した。
真理が奪い返したのは間違いないが、最終的にそれに男は同意したのだ。
でなければ、海中であっさり見逃すはずがない。
援軍を呼ぶことも出来たはずだ。
なのに、見逃した。
まるで。
まるで、そう──早紀に、好意にも似た感情を抱いているかのように。
二人──ずぶ濡れのまま。
しかも、その水は塩水というおまけ付きだった。
早紀が囚われていたのは、海中だったのである。
自室の床を海水で汚しながら、真理は魔女を見下ろしていた。
彼女はうなだれていて、死刑判決を待っているようにも見える。
ふらふらと家を出て、海族に捕まって殺されかけてました、など失態と呼べるレベルではない。
青い被膜の向こう。
真理は、海中で見たのだ。
彼女の首にかかる、男の手を。
正確には、早紀の魔力の糸が、穴を穿った瞬間に見えたのだ。
何を、素直に殺されかけている。
真理は、目を見開いていた。
そして──糸の穿った穴を引き裂いたのだ。
海族の男を、見た。
生まれて初めて見る、青の一族。
氷の壁を突き破り、彼は水の主の顔をして、闇の鎧を見据えたのである。
自分が生身であり、相手が鎧持ちの魔族であったとしても、一切の脅えも怯みもなかった。
あの目は。
戦う者の目だった。
上に立ち、殺せる者の目だった。
本能的に真理は気づいたのだ。
海族と蝕を争うことになったならば、この男と相対することになろう、と。
確かに、男は早紀を殺そうとしていた。
だが。
殺し方の、手ぬるさが気になってもいたのだ。
その気になれば、早紀は一瞬で絶命させられただろう。
憎い魔族の女を殺す方法とは、とても思えなかった。
そして。
男は、早紀を帰した。
真理が奪い返したのは間違いないが、最終的にそれに男は同意したのだ。
でなければ、海中であっさり見逃すはずがない。
援軍を呼ぶことも出来たはずだ。
なのに、見逃した。
まるで。
まるで、そう──早紀に、好意にも似た感情を抱いているかのように。


