---
「ただし…あなたが追わなければなりません」
早紀の魔力の糸を、自分から切り離す前――タミは言った。
この糸の戻る場所を、真理自らが追え、と言うのだ。
ただでさえ理不尽に出て行った者を、カシュメルの当主である彼が。
タミは、自分の青い手のひらから伸びる糸を、不服げに見下ろした。
「この糸は、純粋な彼女の魔力で出来ています…ということは、切り離した途端…私は見失ってしまうでしょう」
不服なのは、早紀の存在を見失ってしまう自分について、か。
タミの言葉は、彼女の持つ正しい知識で出来ている。
カシュメルが――いや、早紀と契約している真理でなければ、糸を追えないと言うのだ。
手のかかる。
ため息の後。
「糸を切れ」
そう、指示を出した。
しゅるんっ。
戒めから逃れた早紀の糸は、風などない室内で、一度うねるように舞い上がった。
タミは、宙に視線をさまよわせている。
もうおぼつかなくなったのか。
次の瞬間。
糸は、最短距離をゆくべく、窓のわずかな隙間をすり抜けた。
あの通りに、追え、と。
ふぅ。
真理は、窓辺に近づくと、そのガラスを開ける。
まだ、明るい外。
生身で飛ぶのは…久しぶりだな。
人間に見られず飛ぶくらいは、まったく問題はない。
問題は。
他の魔族。
カシュメルの当主が、真昼間から生身で空を飛ぶ。
どんな、あらぬ噂を立てられるものか。
しかし。
真理には、選択肢はなかった。
こうしている間にも、糸は遠くへと向かう。
ああ。
理不尽だ。
真理は、窓から飛び立った。
「ただし…あなたが追わなければなりません」
早紀の魔力の糸を、自分から切り離す前――タミは言った。
この糸の戻る場所を、真理自らが追え、と言うのだ。
ただでさえ理不尽に出て行った者を、カシュメルの当主である彼が。
タミは、自分の青い手のひらから伸びる糸を、不服げに見下ろした。
「この糸は、純粋な彼女の魔力で出来ています…ということは、切り離した途端…私は見失ってしまうでしょう」
不服なのは、早紀の存在を見失ってしまう自分について、か。
タミの言葉は、彼女の持つ正しい知識で出来ている。
カシュメルが――いや、早紀と契約している真理でなければ、糸を追えないと言うのだ。
手のかかる。
ため息の後。
「糸を切れ」
そう、指示を出した。
しゅるんっ。
戒めから逃れた早紀の糸は、風などない室内で、一度うねるように舞い上がった。
タミは、宙に視線をさまよわせている。
もうおぼつかなくなったのか。
次の瞬間。
糸は、最短距離をゆくべく、窓のわずかな隙間をすり抜けた。
あの通りに、追え、と。
ふぅ。
真理は、窓辺に近づくと、そのガラスを開ける。
まだ、明るい外。
生身で飛ぶのは…久しぶりだな。
人間に見られず飛ぶくらいは、まったく問題はない。
問題は。
他の魔族。
カシュメルの当主が、真昼間から生身で空を飛ぶ。
どんな、あらぬ噂を立てられるものか。
しかし。
真理には、選択肢はなかった。
こうしている間にも、糸は遠くへと向かう。
ああ。
理不尽だ。
真理は、窓から飛び立った。


