大きな手。
片手でも、楽に掴めそうなのに、伊瀬は両手を早紀の首に回した。
今度こそ…本当に死ぬんだろうなあ。
理由も分からず、既に二度殺されたのだ。
今度の死は、まだ分かりにくいながらに理由がある。
実の母親の、ツケを支払うということだ。
払ってやる義理などはない。
しかし、早紀が生きている意味を見いだせない以上、抵抗してまで生に執着する気になれなかったのだ。
「何故だ…」
首にかけられた手に、まだ力はこめられない。
代わりに、伊瀬の苦しげな声が漏れ落ちる。
「何故、君はそんなにも魔女らしくないのだ…海が…我らの力が、そうさせるのか」
魔女らしくないなんてもう、聞き飽きてしまった。
第一、少し前まで自分は人間だと信じて疑っていなかったのだから。
「魔族なんて……」
早紀は、首にかけられた手を温かくさえ感じた。
真理の手は――冷たかった。
彼は、早紀を一番最初に殺した。
脳裏に、真理の冷たさがよぎる。
「魔族なんて…クソ食らえよ」
言った直後。
胸がしめつけられた。
ああ。
思い出したくない記憶が、掠めてしまう。
初対面で、早紀を追い出そうとした男の子がいた。
それからずっと、追い出そうとしていた少年がいた。
今夜、家に帰ってくるなと言った男がいた。
「愛されろ」、と言った魔族が――いた。
あれは、なんだったのか。
彼は――何をしたかったのか。
今更。
今更考えても、何もかも遅く詮ないことだ。
早紀は、死ぬ。
今度こそ、本当に。
苦しげに、伊瀬は指に力を込めた。
その力に押されるように、早紀は天を仰ぐ。
青い天井。
その天井から―― 一滴、青い水がしたたった。
片手でも、楽に掴めそうなのに、伊瀬は両手を早紀の首に回した。
今度こそ…本当に死ぬんだろうなあ。
理由も分からず、既に二度殺されたのだ。
今度の死は、まだ分かりにくいながらに理由がある。
実の母親の、ツケを支払うということだ。
払ってやる義理などはない。
しかし、早紀が生きている意味を見いだせない以上、抵抗してまで生に執着する気になれなかったのだ。
「何故だ…」
首にかけられた手に、まだ力はこめられない。
代わりに、伊瀬の苦しげな声が漏れ落ちる。
「何故、君はそんなにも魔女らしくないのだ…海が…我らの力が、そうさせるのか」
魔女らしくないなんてもう、聞き飽きてしまった。
第一、少し前まで自分は人間だと信じて疑っていなかったのだから。
「魔族なんて……」
早紀は、首にかけられた手を温かくさえ感じた。
真理の手は――冷たかった。
彼は、早紀を一番最初に殺した。
脳裏に、真理の冷たさがよぎる。
「魔族なんて…クソ食らえよ」
言った直後。
胸がしめつけられた。
ああ。
思い出したくない記憶が、掠めてしまう。
初対面で、早紀を追い出そうとした男の子がいた。
それからずっと、追い出そうとしていた少年がいた。
今夜、家に帰ってくるなと言った男がいた。
「愛されろ」、と言った魔族が――いた。
あれは、なんだったのか。
彼は――何をしたかったのか。
今更。
今更考えても、何もかも遅く詮ないことだ。
早紀は、死ぬ。
今度こそ、本当に。
苦しげに、伊瀬は指に力を込めた。
その力に押されるように、早紀は天を仰ぐ。
青い天井。
その天井から―― 一滴、青い水がしたたった。


