極東4th

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 距離は、あまり関係ない。

 真理は、その事実を悪い意味で理解しなければならなかった。

 早紀との――現実的な距離の話だ。

 昨夜。

 彼女は、屋敷を出たようだ。

 朝、誰も早紀を見つけられなかった。

 正確には、真理が問わなければ、使用人の誰一人と彼女の不在に気付かなかったのだ。

 彼みずから早紀の部屋に赴いたが、そこには誰の気配も残されてはいなかった。

 昨夜のあの出来事が引き金で、彼女は屋敷を出ていったのだろうか。

 理不尽な事象に、真理は学校にも向かわず、自室で立ち尽くしていた。

 知りたいと望んでいたから、彼はわざわざ労力を使い、それを調べたのだ。

 そして、証拠の人間の近くまで案内してやった。

 真理が、このカシュメルの当主が、そこまでしてやったのである。

 感謝されることこそあれ、逃亡されるいわれなどない。

 真実を投げ与え、早紀がいままでうだうだとこだわってきた過去と、決別させるつもりだった。

 そう。

 真実を。

 ああ言えば、早紀のあきらめがつくと思っていたのだ。

 しかし、結論は真逆だった。

 早紀は消え、どこに行ったかさえ分からない。

 かすかな雑音を感じるのは、いま彼女のいる場所に、何か関わりがあるのか。

 これまでに数回感じた雑音。

 いまだその原因は分からない。

 ただ。

 彼女がその原因に包まれた時のことを、真理には決して教えないということだ。

 あのちっぽけな魔女の──数少ない抵抗。

 そして、真理は知るのだ。

 いますぐ、彼女を連れ戻せない現実を。

 いつ、戻ってくるかも分からない。

 簡単に言えば。

 真理は魔女と共に。

 大事な鎧を失った、ということだった。