極東4th

「さあ、役に立つんだ」

 早紀をぶら下げたまま、修平は笑った。

「そのために…引き取られたんだから」

 人間とは思えないほどの狂気の瞳と力が、早紀を廊下へと釣り出す。

 いま、何と。

 修平は、いま何と言ったのか。

 遠い遠い親戚の早紀を、何故か引き取ってくれた優しい人たち。

 何故か、引き取ってくれた。

 呆然として、うまく考えられない。

 抵抗も出来なかった。

 一瞬すれ違った真理が──自分を見ている。

 いつも通りの、目で。

 すぐに、再び暗い部屋に連れ込まれた。

「美しき物よ…お前を甦らせる女を連れてきたぞ」

 劇の様に大げさに、修平は引き上げている早紀を床に放り出した。

「ああっ!」

 床に身体を打ちつけながらも、早紀はその先にあるものを見てしまった。

 ほの白く、闇に浮かび上がる大きな物。

 人のような姿のそれが、自分を見下ろしている。

 それが、少し身じろいだかと思うと床が震えた。

 とてもとても──重いもの。

「私がやろうか?」

 修平の声が、廊下を向いていた。

「…俺がやろう」

 声は。

 真理のものだった。

 ゆっくりと、背後から足音が近づいてくる。

 早紀の、ほんのすぐ後ろに。

 すぅっと、その存在が身を屈めた気配。

 修平のもの以上に冷たい指先が、床の早紀の喉元にかかった。

 何を…。

「言うことを聞かなかったんだ…あきらめろ」

 真理の指が──喉を鋭く撫でる。

 カッと。

 焼けるような痛みが走った。