極東4th

「あーあ」

 鎧の男が、苦笑気味に早紀を見た。

 あれ。

 いつの間に、彼女は眠ってしまったのだろう。

 夢路を歩いていた自分に、早紀は疑問を感じた。

 眠れるような状況では、なかったというのに。

「まったく、オレの想像の及ばんことをするなあ、お前は」

 さてさて、どうしたもんか。

 一人で話を進める鎧に、早紀は考えをまとめられずにいた。

 この夢路に来る前、彼女はあの屋敷を出たはずだ。

 疲れ果てていた。

 とにかく心がもう、この上なく疲れ果てて、いますぐ消えてしまいたいと思ったのた。

 豪雨の中、早紀は生きるため以外の目的で歩いたのだ。

 そして。

 ふっと、残像のようによみがえる、雨のカーテン。

 そのカーテンの向こうに、早紀は踏み込んだ。

 わかっていたのだ。

 頭の隅で、そのカーテンの向こうに何があるのか。

 なのに、踏み出していた。

 刹那。

 ぬかるんだ泥の地面が、早紀の足を捕らえた。

 斜めの地面。

 存在を隠すことしかできない魔女は、人間と同じように簡単に、その斜面を転がり落ちた。

 バシャンッ!

 泥をたっぷりと含んだ、ひどい流れが彼女を受けとめる。

 嗚呼。

 最後に、早紀は思った。

 魔女は――溺死できるかな。