雷と雨を引き裂いて飛んでいた鎧は、ゆっくりと減速していく。
はっきり、目的を持った動きだった。
鎧の中で、寒くもないのに震えを止められずにいた早紀は、ある方向を見た。
正確には、いまの鎧の主導者である真理が向いた方を、自動的に見ただけだ。
雨にけぶる四角い建物の、ひとつの四角い窓。
その窓辺には──ベッドがあった。
そして。
人が、横たわっていた。
病院?
早紀が、ぼんやりとその認識をした直後。
あ。
決壊する一瞬前の、ひとつの言葉。
ぁああああああ!!!!
ステルスなど、一瞬で崩壊するほどの大声を、早紀は鎧の全身で放っていた。
勿論、それは物理的に外に漏れることはない。
真理の、意識的聴覚をつんざくだけだろう。
しかし、早紀は叫ばずにはいられなかった。
そこには、おかっぱの女性がいたのだ。
記憶より年を重ねてはいるものの、早紀の記憶を鮮明に塗りつぶすほどの威力があった。
お母さん!
猛獣が吠えるように、早紀はそれを叫んだ。
驚きよりも早く、野生そのもので出来た愛しさが駆け抜ける。
そして、本能のまま彼女はその部屋へ向かおうとした。
のに。
ガチャン。
身体は、不恰好な金属の音を立てるだけで、真理に制されてしまっていた。
すぐそこに、会いたくてしょうがなかった母がいるのだ。
一秒でも早くその側に駆けつけ、自分が早紀だと名乗りたかった。
そして、優しく抱きしめて欲しかった。
制御される鎧もものともせず、早紀はガシャガシャと関節部を鳴らして動こうとしたのだ。
『あれは…人間だ。お前の本当の母ではない』
あ、れ?
鎧の動こうとする雑音のせいで──何を言われたか、よく聞こえなかった。
はっきり、目的を持った動きだった。
鎧の中で、寒くもないのに震えを止められずにいた早紀は、ある方向を見た。
正確には、いまの鎧の主導者である真理が向いた方を、自動的に見ただけだ。
雨にけぶる四角い建物の、ひとつの四角い窓。
その窓辺には──ベッドがあった。
そして。
人が、横たわっていた。
病院?
早紀が、ぼんやりとその認識をした直後。
あ。
決壊する一瞬前の、ひとつの言葉。
ぁああああああ!!!!
ステルスなど、一瞬で崩壊するほどの大声を、早紀は鎧の全身で放っていた。
勿論、それは物理的に外に漏れることはない。
真理の、意識的聴覚をつんざくだけだろう。
しかし、早紀は叫ばずにはいられなかった。
そこには、おかっぱの女性がいたのだ。
記憶より年を重ねてはいるものの、早紀の記憶を鮮明に塗りつぶすほどの威力があった。
お母さん!
猛獣が吠えるように、早紀はそれを叫んだ。
驚きよりも早く、野生そのもので出来た愛しさが駆け抜ける。
そして、本能のまま彼女はその部屋へ向かおうとした。
のに。
ガチャン。
身体は、不恰好な金属の音を立てるだけで、真理に制されてしまっていた。
すぐそこに、会いたくてしょうがなかった母がいるのだ。
一秒でも早くその側に駆けつけ、自分が早紀だと名乗りたかった。
そして、優しく抱きしめて欲しかった。
制御される鎧もものともせず、早紀はガシャガシャと関節部を鳴らして動こうとしたのだ。
『あれは…人間だ。お前の本当の母ではない』
あ、れ?
鎧の動こうとする雑音のせいで──何を言われたか、よく聞こえなかった。


