極東4th

「私のっ……」

 早紀が、勇気を持って出そうとした声は――裏返った。

 痙攣するように、喉がひくっと鳴る。

 言わなきゃ。

 気負いすぎた彼女の唇が、もう一度空を切った時。

 真理は。

 目の前に立っていた。

 あっと、思う間もない。

 冷たいその指先が、早紀の額を滑ったのだ。

 ガシャン。

 な、んで。

 全身が金属になる感覚に襲われながら、早紀は真理を見ていた。

 今日は蝕ではない。

 そうならば、早紀が最初に気付くはずだ。

 鎧になる必要などないのに。

 しかし、逆らえるはずなどない。

 早紀は、真っ黒い塊になるしかなかった。

 その塊に。

 真理が、入ってくる。

 生々しく、早紀の隙間を埋めてゆく、違う生き物。

 なんで、なんで。

 早紀は、聞きたいことがあるのだ。

 答えが欲しいのだ。

 悠長に、鎧になっている暇などない。

 だが。

 混乱しながらも、早紀はステルスをかけなければならなかった。

 止められないこの気持ちを、真理に知られるわけにはいかないのだ。

 海族のこともあったが――この気持ちそのものを、真理が理解できるとは思わなかったから。

 殻に閉じこもる。

 その中で、早紀は殻を叩き続けるしか出来ないのだ。

 おかあさん、おかあさん、と。

 身体は勝手に動き、テラスにつながる窓を開ける。

 雷鳴と、叩きつける雨。

 飛び立った鎧を、雨が容赦なく打ち据えた。