夜になっても、真理は部屋に戻らなかった。
早紀は、何度も勇気を奮い起こし直して、部屋に向かったのだ。
ついには、彼の部屋のドアを開ける暴挙までおかしたのだから、不在は間違いなかった。
泥水を掻き混ぜるような濁った思考になりながら、彼女は母の写真を抱えていた。
そんな早紀の気持ちを追うように、雷鳴が轟き、強い雨が降り始める。
お母さん。
何回、そう呼び掛けただろう。
胸に抱えている、写真の女性に向ける言葉だ。
決してあんな派手で、魔女魔女しい女に向けるものではない。
だが、そんな早紀の心を、修平の言葉が踏みにじる。
必死に否定しながら、早紀は十数回目の、真理の部屋詣でに向かうのだ。
既に早紀の心には、海族のことなど消え去っていた。
本当に自分という存在を守ることだけしか、考えられなかったのだ。
ドアをノックする。
沈黙。
その後。
「…入れ」
真理は――戻っていた。
あ。
心臓が、握りつぶされるような痛みを、早紀は覚えた。
いきなり、答えがそこにあるのだと感じたせいだ。
真理は、誰かも問わずに入れと言った。
早紀が、来たとわかっていて、入れ、と。
震えの走った手で、ドアを開ける。
室内は、真っ暗だった。
闇の中に、真理が立っている。
瞬間。
雷鳴が一瞬、部屋を照らす。
白い真理の肌が――ひどく蒼く見えた。
早紀は、何度も勇気を奮い起こし直して、部屋に向かったのだ。
ついには、彼の部屋のドアを開ける暴挙までおかしたのだから、不在は間違いなかった。
泥水を掻き混ぜるような濁った思考になりながら、彼女は母の写真を抱えていた。
そんな早紀の気持ちを追うように、雷鳴が轟き、強い雨が降り始める。
お母さん。
何回、そう呼び掛けただろう。
胸に抱えている、写真の女性に向ける言葉だ。
決してあんな派手で、魔女魔女しい女に向けるものではない。
だが、そんな早紀の心を、修平の言葉が踏みにじる。
必死に否定しながら、早紀は十数回目の、真理の部屋詣でに向かうのだ。
既に早紀の心には、海族のことなど消え去っていた。
本当に自分という存在を守ることだけしか、考えられなかったのだ。
ドアをノックする。
沈黙。
その後。
「…入れ」
真理は――戻っていた。
あ。
心臓が、握りつぶされるような痛みを、早紀は覚えた。
いきなり、答えがそこにあるのだと感じたせいだ。
真理は、誰かも問わずに入れと言った。
早紀が、来たとわかっていて、入れ、と。
震えの走った手で、ドアを開ける。
室内は、真っ暗だった。
闇の中に、真理が立っている。
瞬間。
雷鳴が一瞬、部屋を照らす。
白い真理の肌が――ひどく蒼く見えた。


