あの真理が――驚いていた。
床に転がる早紀を見て。
初めて見るその顔に、早紀の方が驚いてしまいそうだ。
しかし、そんな場合ではない。
彼女は、不自由な姿のままで、二人を見上げた。
驚いている真理の横で、修平は薄ら笑いを浮かべている。
「ほら…真理…これが必要なものだろう」
何を。
修平は、何を言っているのか。
彼の指す手は、早紀の方を向いている。
笑顔をたたえ、瞳は恍惚と輝きながら真理を見ていた。
「この大事な日に、この子を家に置いておかないなんて…駄目じゃないか」
修平の瞳が、ふっと自身の手へと落とされる。
左の手首。
時計の位置。
修平の唇の端が、ゆっくりと上がる。
「ハッピーバースデイ、真理」
瞬間。
ゴトリ、と重い音がした。
二人の男の、もっと後ろ。
ミシミシと、床がきしむ。
一筋の、冷たい空気が早紀の鼻先を撫でた。
何。
四本の足の向こうは、暗い空間。
そこで何の音がしているのか、早紀は目をこらして見ようとした。
「さあ、お目覚めだ」
修平が、音の方を──ではなく、早紀の方へと歩みを進めてくる。
「長い眠りだったんだ…おなかをすかせているんだ…かわいそうに」
「あっ!」
早紀は、縄を切られた事実を認識する暇もなく、右腕を掴まれ引き上げられた。
自分の足で立っている、ということではない。
修平の片手に釣り上げられるようにして、ぶらさがったのだ。
不安定に、足がゆらゆらと揺れる。
痛い、という事実より先に、全身を襲う恐怖。
掴まれた手の冷たさが、つま先まで凍らせるようだ。
「だから…」
そんな恐怖の彫刻と化した早紀に。
真理が、小さくため息をついた。
「だから…出て行けと行ったんだ」
床に転がる早紀を見て。
初めて見るその顔に、早紀の方が驚いてしまいそうだ。
しかし、そんな場合ではない。
彼女は、不自由な姿のままで、二人を見上げた。
驚いている真理の横で、修平は薄ら笑いを浮かべている。
「ほら…真理…これが必要なものだろう」
何を。
修平は、何を言っているのか。
彼の指す手は、早紀の方を向いている。
笑顔をたたえ、瞳は恍惚と輝きながら真理を見ていた。
「この大事な日に、この子を家に置いておかないなんて…駄目じゃないか」
修平の瞳が、ふっと自身の手へと落とされる。
左の手首。
時計の位置。
修平の唇の端が、ゆっくりと上がる。
「ハッピーバースデイ、真理」
瞬間。
ゴトリ、と重い音がした。
二人の男の、もっと後ろ。
ミシミシと、床がきしむ。
一筋の、冷たい空気が早紀の鼻先を撫でた。
何。
四本の足の向こうは、暗い空間。
そこで何の音がしているのか、早紀は目をこらして見ようとした。
「さあ、お目覚めだ」
修平が、音の方を──ではなく、早紀の方へと歩みを進めてくる。
「長い眠りだったんだ…おなかをすかせているんだ…かわいそうに」
「あっ!」
早紀は、縄を切られた事実を認識する暇もなく、右腕を掴まれ引き上げられた。
自分の足で立っている、ということではない。
修平の片手に釣り上げられるようにして、ぶらさがったのだ。
不安定に、足がゆらゆらと揺れる。
痛い、という事実より先に、全身を襲う恐怖。
掴まれた手の冷たさが、つま先まで凍らせるようだ。
「だから…」
そんな恐怖の彫刻と化した早紀に。
真理が、小さくため息をついた。
「だから…出て行けと行ったんだ」


