「私が見たいのは、これではない!」
ドアの向こうで、修平が声を荒げた。
本当に彼の声かと、一瞬耳を疑うような感情的な声。
「違うだろう? 分かっているだろう? 本物はこうじゃない」
高揚していく、狂気的とも思える修平の声が続けられる。
「本物は、吸い込まれるほど沈んだ闇の色をしているはずだ!」
強く、強く、誰かに言葉をぶつけていく。
その声が、いきなり途切れた。
何の話をしているのか。
修平は、何を考えているのか。
早紀は、声をかけられないまま、じっと外の声を拾い続ける。
「ああ、大丈夫だ…心配はいらない」
沈黙の後。
突然、修平の声が猫なで声に変わる。
「いま、私に見せてくれたものは本物だ…ちゃんと、私も分かっている」
言い聞かせるような、ねっとりした声。
早紀は、怖くなった。
聞けば聞くほど、修平は修平でなくなってゆく。
では、あれは誰なのだ。
後見人ではないのか。
一体、何を見ようとしているのか。
「分かっているとも…足りないものも、ちゃーんと分かっている」
ざわざわと、早紀の背中を冷気が這い上がってゆく。
言いようのない恐怖が、物理的なロープ以上に早紀を縛り上げる。
「だから…」
ゆっくり、ゆっくりとした修平のその言葉。
ドアという壁があるにもかかわらず、その壁を貫通して、いま一瞬、早紀に視線が突き刺さった気がした。
「だから…用意したよ、真理…君のために」
きぃ。
足元だけだった小さな光が。
みるみる大きくなって、早紀の部屋の中に差し込んでくる。
ああ…ああ…。
大きくなった光に、彼女はさらされた。
そして、四つの瞳が早紀に向けられる。
修平と──真理と呼ばれた少年の目だった。
ドアの向こうで、修平が声を荒げた。
本当に彼の声かと、一瞬耳を疑うような感情的な声。
「違うだろう? 分かっているだろう? 本物はこうじゃない」
高揚していく、狂気的とも思える修平の声が続けられる。
「本物は、吸い込まれるほど沈んだ闇の色をしているはずだ!」
強く、強く、誰かに言葉をぶつけていく。
その声が、いきなり途切れた。
何の話をしているのか。
修平は、何を考えているのか。
早紀は、声をかけられないまま、じっと外の声を拾い続ける。
「ああ、大丈夫だ…心配はいらない」
沈黙の後。
突然、修平の声が猫なで声に変わる。
「いま、私に見せてくれたものは本物だ…ちゃんと、私も分かっている」
言い聞かせるような、ねっとりした声。
早紀は、怖くなった。
聞けば聞くほど、修平は修平でなくなってゆく。
では、あれは誰なのだ。
後見人ではないのか。
一体、何を見ようとしているのか。
「分かっているとも…足りないものも、ちゃーんと分かっている」
ざわざわと、早紀の背中を冷気が這い上がってゆく。
言いようのない恐怖が、物理的なロープ以上に早紀を縛り上げる。
「だから…」
ゆっくり、ゆっくりとした修平のその言葉。
ドアという壁があるにもかかわらず、その壁を貫通して、いま一瞬、早紀に視線が突き刺さった気がした。
「だから…用意したよ、真理…君のために」
きぃ。
足元だけだった小さな光が。
みるみる大きくなって、早紀の部屋の中に差し込んでくる。
ああ…ああ…。
大きくなった光に、彼女はさらされた。
そして、四つの瞳が早紀に向けられる。
修平と──真理と呼ばれた少年の目だった。


