涙で滲んだ視界の中に、彼がいる。

栖栗は目を見開いた。

まさかこんなとこでお目にかかれるなんて、と。


「もう少しで授業始まるけど、もしかしてサボるつもりか?」


英はどこか呆れ混じりに言うと歩みを進めて、栖栗の隣りに並んだ。
栖栗は何とか視界に彼を捕らえようと、手の甲でぐいっと強引に涙を拭った。


「‥‥生徒会長こそ、もう少しで授業が始まるけど、もしかしてサボるおつもりなのかしら?」


にぃっと口の端をつり上げると、その小悪魔のような笑みに英は肩を竦めた。

さも、心外だというように。


「誰が。オレはただ、校内の見回りをしてるだけだ」

「見回りという名のサボりをしようとしている?」

「いい加減にしないと怒るぞ。あと、目上の人への言葉遣いがなってない」


あまりにも偉そうに、そしてあまりにも嫌味に言う栖栗に、ムッと眉を顰める英は、やはり格好よかった。

それこそ、イケメン俳優並に。


「‥君、新入生だろ?新入生がいきなり授業をサボるのは関心しないな」