授業の最初には必ずと言っていいほどに、教科担当と生徒たちの自己紹介があった。

教師にしてみれば、生徒たちを知る上で自己紹介は、大切なものなのかもしれない。
しかし、生徒たちにとってはそれはただの面倒でしかなく、栖栗もその一人だった。

そんなこんなで、午前中の授業は問題もなく終わっていった。

けれど、栖栗に言わせればそれはただ「時間を無駄にした」だけに過ぎない。
何故ならやはり彼女にとって、この学校生活はつまらないものだから。

つまらないものだと、レッテルを貼ってしまったから。

昼食が終わった後、栖栗は一人、屋上にいた。
見上げた空は酷く綺麗な青色で、このつまらない学校生活の象徴な気さえした。
思わず溜め息が漏れる。

昨日から何度目だったろうか。


「あー‥つまんない。何でこんなに何もない学校に入ったのかしら。もし、落ちてさえなかったら‥」


手摺に背中を預けながら、ぐん、と伸びをする。
すると不思議と欠伸が漏れて、眠気が襲った。

このままここでサボってしまうのもいいかもしれない。


そう思った、とき。


「君、こんなとこで何してんの」


聞き覚えのある声がした。

それはあのとき、自分のつまらない生活を変えてくれると、そう思わせた彼の声だった。