雨が、傘を勢いよく打ち付けつけるものだから、バタバタとかなりやかましい音がした。
まるで、ちょっとした騒音、だ。
耳を塞ぎたい衝動に駆られるも、そんなことをしては荷物が落ちてしまうから、我慢しながら水溜まりを避けて歩く。
外はもうすっかり暗くなってしまっている。
だから、水溜まりに漬かってしまうことも、もちろんあるのだが、二人はそれを仕方ないことだと思っていたから、気にはしなかった。
いつもの栖栗ならば、これに関して、ヒステリックを起こし兼ねないのだが、何せ、気分がいい。
だからただ、歩くのだ。
彼の隣りで。
「──で、何で、傘ないんだ?」
英が、水溜まりを一つ避け、一息吐いてから何気なく問い掛ける。
栖栗は思わず立ち止まりそうになるものの、濡れたくはないから、すぐにまた歩き出す。
そうして、溜め息を漏らし、呆れ混じりで英を見る。
「‥‥‥それを私に聞くのか、チワワよ」
「‥は?」
あんたさんの取り巻きのメス犬たちよ、とは言えずに、ただただ、やれやれ、といった様子で額に手をやる栖栗に、英は眉を顰め怪訝そうな顔をする。


