「いい。入れなさい」
「はいはい」
英は、またソレか、とじとりとした目で赤い首輪を見つめながら、力なく頷き、傘を開く。
「はい、は、一回!」
にぃっと笑う栖栗はまるで小悪魔のよう。
さも当たり前のように、傘の中へと入ると、背伸びをして赤い首輪を英に着ける。
傍からすれば、「飼い主という立場を利用した職権乱用」にしか見えないのだと、英は思う。
けど、これはこれで、いい。
隣りには、彼女。
それだけで、何だか晴れやかな気分になる。
もっと言えば、久しく会っていない旧友と出くわしたかのような、懐かしく、楽しい気持ち。


