成立事項!

 

温かくて、大きな手。



しっとりと湿り気を帯びた自分の手を掴むそれを、普通は不快に思うだろう。

けれど、栖栗は不快には思わなかった。


むしろ、心地がいい。

そして、胸が先ほどのように、苦しくなるものだから、栖栗は反射的に心臓に手を当てた。


でもこれも不快ではない。



心地いいのだ。



「‥‥‥私、傘ない」


栖栗は試すように、そう言って英の反応を伺った。

すると、英は笑って、栖栗の頭を撫でた。

そのせいで帽子が少しずれてしまったので、栖栗は不機嫌そうに唇を尖らせる。


「折り畳み傘があるのでご安心を」


スクールバックから出されたのは、セーラー服と同じ濃紺の折り畳み傘だった。

栖栗はそれと英を交互に見る。


「‥‥入っていいの?」

「‥置き傘ある場所、教えてやるか?」


悪戯に笑う英に栖栗も同じように笑った。

そして、スクールバックを漁り、“アレ”を取り出す。

ソレは鈍く光る真っ赤な赤い首輪だった。