それと同時に、一つに結ってある髪が大きく揺れる。
そうして、顔を上げたあさひの瞳は、きらきらと輝いていた。
どうやら、顔を覚えてもらっていたことが、相当嬉しかった、らしい。
「あ‥たしか、美化委員の副委員長だったよな‥」
英は彼女の名前を聞いて、すぐに思い出した。
副委員長は基本的には会議には出ない。
出ていなくとも、“副委員長”という立場があったお陰で英は彼女を知っていたのだ。
何せ、二年生で副委員長になることは、あまりないからだ。
普通は、三年生が委員長と副委員長を引き受けるものだが、その分、彼女には副委員長になるだけの力があったのだ、と思う。
英が浮かべるのは、皆が崇める生徒会長の穏やかな笑みだった。
栖栗の目には、初めて壇上で見た、あの日の彼が写る。
「あ、あの‥生徒会長に頼みがあるんですけど‥」
あさひは、顔をリンゴのように真っ赤にしながら、英を見上げる。
「‥‥っ!?」
焦燥、が正しいと思った。
今の自分は自分ではないような気がして、栖栗はスクールバックの持ち手にぎゅうっと力を込める。


